ネットで広まる評判に振り回されるな

ラベリング効果について勉強していく中で、なるほどなと思う反面「なんか矛盾していないか?」と感じてしまったことがある。それは、影響力の大きな『食べログ』の存在だ。ここに投稿している「自称・グルメ」の人たちのカキコミがラベリング効果を発揮してしまっていることを俺は危惧している。

本来、味の感じ方……味覚なんて千差万別で、Aさんが「美味い!」と思っても、Bさんは「味が薄い」と言ったり、Cさんは「別に美味しくない」とバラバラな意見になるのが普通のことだ。100人が100人、口を揃えて「美味い!」というのは、かなり異常な状況で、それを現実のものにしてしまうのがラベリング効果のちょっと怖いところでもある。

いろいろな人に話を聞くが、店選びに迷った時は、食べログのランキングと平均得点で決めるという。そしてもっとも重要視するのが感想の書き込みだそうだが、「自称・グルメ」の意見を本当に鵜呑みにしていいのかな? 

ちなみに、うちの『麺ジャラスK』も頼んでいないのに勝手に食べログに掲載されているが、ある意味でネット社会の便利さが産み出す怖さであると思う。

あれは試合でも浴びたことのないヤジだった

ウチの店でも、こんなことがあった。

以前、来店していただいたことがあるというサラリーマン風のお客さんが部下を何人か連れてやってきた。そのお客さんはラーメンを人数分頼むと、厨房にまでハッキリと届くほどの大きな声で、部下に向かってこういった。

「俺は一度、食べたことがあるからわかる。この店のラーメンはすごくマズいんだよ! マズくて有名な店だから、今日はネタとして、お前にたちも食べさせてやろうと思って連れてきてやったんだ!」

別にね、客商売だからいろんなことを言われることには慣れてるけど、こんな至近距離で、しかも大声で「マズい」と連呼されることはさすがにめったにないことなので、よく覚えている。プロレスの試合でもここまでひどいヤジを浴びたことはないよ。

俺はラーメンを作りながら「そんなにマズいと思っているものに、よくお金を出すよなあ」と思ったけれど、それでもいつもと同じように心を込めて提供した。

とはいえ、さすがにここまで言われると、ひっかかるものもあるので「お待たせしました。マズいラーメンですいません。どうぞ召し上がってみてください」とひとこと添えて、テーブルに出したけどね。

『麺ジャラスK』看板メニューのひとつ白湯(ぱいたん)ラーメン

数秒後「どうだ、マズいだろう?」という上司に対して、ラーメンを食べた部下たちが口々に「いや、部長、すごくうまいんですけど」。これには上司も「お前たちの味覚はどうかしている!」と荒れまくっていた。部下たちが忖度して「マズいです」と言わなくてよかったよ。

でも、これはリアルの世界の話だから、こういう展開になったけど、ネットの世界だと一方的に発信され意見を鵜呑みにするケースが多いので、飲食的にとっては厄介です。