「僕なら」意見はファンから求められていない

新保 お話は面白いし、声は素敵だし、解説が真中さんだと私自身リスナーとして「わーい、真中さんだ!」という感じなんです。ご自身としては、プロ野球解説者のお仕事はどうですか?

真中 3年目になりますが、解説の仕事は好きです。やっていてストレスはまったく感じません。なんか家でお酒を飲みながら、野球を観て独り言を言っているのを、みんなに聞いてもらっているような感じですかね(笑)。

新保 何か心掛けていることや、意識していることはありますか?

真中 僕が心掛けているのは「仕事をしに行かない」ということですね。あんまり解説をやりに行かない。あくまでもシンプルに「聞いていて邪魔にならないように」という思いが一番あります。

新保 そうなんですね。たしかに、たとえば「ちょっと素人目には分かりにくいミスや配球」といった、コアな情報が楽しいという人もいると思いますが、多くのファンはひいきのチームを応援しながら、見たり聞いたりしているので、もしできることなら、いい情報をもらいながら純粋に楽しみたいのかなと思います

真中 そうそう。たとえばニッポン放送にはたくさんの解説者がいますよね、だからいろんな解説者がいていいんですよ。マニアックに、細かく配球を解説する人がいていいし、選手の癖を語る人、野球のなんたるかを語る人など、いろいろいていい。

僕の場合は、まず「試合で何が起こったのかを、リスナーにちゃんと分かってもらえるような解説がしたい」と思っています。そのうえで、各選手の特徴を軽く話したり、野球にはこんな面白さがある、というのを加えたりしていく。

あと、あんまり自分のことを話しすぎると中継の邪魔になるので、気をつけています。とくに「僕なら、ここはバントですね」「僕なら、ここはヒッティングですね」といった「僕なら~」という意見はいらないと思っています。テレビ・ラジオを楽しんでいる人は、その試合で実際の監督が何を考えているのかに興味があるわけで、「解説の真中がどう思っているか」なんていらないんです。これも「仕事をしに行かない」のひとつ。

もちろん、セオリーとしてはバントだとか、実況で「真中さんだったら、どうしますか」と聞かれれば「僕だったら」と話すことはありますけどね。それと、最後にオチがつくような面白い話だったら、自分の話も積極的にします(笑)。

▲ユーモアを織り交ぜたトークも天性の才能。新保さんも笑いが絶えません