第4勢力「楽天モバイル」のリアルな評価

最後に寡占状態に風穴を開けようとする、楽天モバイルの評価を詳しく聞いた。事業計画・ビジネスモデル・周波数の3つの側面から評価してもらった。

1.楽天の事業計画

「2018年4月に携帯事業の認可を得た楽天は、計画していた2019年10月のサービス開始を実現できず、総務省から再三の指導を受け、2020年4月になんとかサービス開始にこぎつけました。通信の素人集団が作成した事業計画が、スムーズに展開されるはずもなく、楽天の受けた総務省の指導は、生みの苦しみと言えそうですが、ドコモ等から人をかき集め、4月のサービス開始後は、かなりスムーズに計画が進行しているように見えます。

設備面では、交換機に汎用のサーバーを利用し、クラウドを利用する仮想化ソフトウェアの大胆な採用で、設備コストを大幅に削減していることが注目されます。従来の携帯キャリアに比べて、半額程度ともいわれる低コストの通信基地局や局内サーバは、楽天の競争力の源泉になると思われます。また今後、国内で提供するサービスの品質が確認されれば、海外での設備提供も視野に入ってくると思われます。

料金面では、低コストの設備を武器に、大手の半額以下の料金で大容量通信を実現する、単一の料金プランを打ち出した点が注目されます。5Gの時代に突入し、映像中心のコンテンツが主流になるなかで、楽天のシンプルな料金プランは、時代にマッチしていると感じます。複雑な料金プランで、利用者を惑わすような大手3社に対し、極めて分かりやすい料金プランで勝負に出た楽天の戦略は、ユーザにも高く評価されると思います。

サポート体制や、資本金などの事業規模に不安があることは事実ですが、かつて新規参入したソフトバンクも、似たような状況からスタートし、今では大手2社と肩を並べています。私は、楽天の姿勢がユーザの評価を得ていくのではないか、と考えています。

2.ビジネスモデル

「4Gまでの携帯ビジネスは、通信の品質(つながりやすさ・障害・音質など)が競争
の主要因でしたが、5Gの時代に入り、携帯電話のビジネスモデルにも変化が見られます。通信と他の産業分野(医療・農業・教育・製造・映画・金融など)の融合で、収益を上げる方向に動いています。既存の通信事業者は、他の産業分野へのアプローチを積極化していますが、楽天の強みは、すでに自前の経済圏を形成していることにあります。

携帯電話を、楽天経済圏で共通に使用できるようツール化し、ポイントの相互利用など、楽天グループ全体でユーザの利便性を高め、収益を上げようとしている点が注目されます。こうした戦略は、楽天モバイルの設定する料金を、他社が真似できない水準まで下げることも可能にするように思われます。

▲楽天の強みは、すでに自前の経済圏を形成していること イメージ:PIXTA

3.周波数

「2018年4月に、楽天が事業認可を得た際に割り当てられた周波数は、1.7GHzの高周波数の帯域の電波でした。高周波数の電波は直進性が強く、途中に障害物があるとそこで止まってしまいます。一方、700MHz付近の低周波数の電波は、障害物があっても回り込んで遠くまで飛ばすことができ、この違いが設置する基地局の数や、建設期間の違いとなって現れ、低コストの設備建設に繋がります。

それゆえ、この使い勝手のよい700MHz付近の低周波数の電波は、携帯会社が欲しがりプラチナバンドの電波と呼ばれています。楽天が総務省から再三にわたって基地局建設を急ぐよう指導を受けた背景には、楽天に割り当てられた電波の帯域の問題も隠れていたのです。

総務省と大手3社の間では、さまざまな密約や裏取引が行われた結果、3社すべてにプラチナバンドが割り当てられてきた、と言われています。このような3社と楽天が、公正な競争ができるわけがありません。楽天に3社と同様なプラチナバンドを割当てることは、公正競争を実現する第一歩です。そして通信基地局建設を全国ベースで加速させることが、通信料金の大幅値下げにもつながります。

電波配分の見直し実現には、電波割り当ての見直しに強硬に反対している、放送業界(民放連)を説得する必要があり、菅総理の政治力が試されることは先述のとおりです。また、電波配分の見直しは、大量の優良電波を生み出す電波の大改革でもあり、生み出された優良電波を、インターネット放送などで活用することにより、地方のゾンビ企業候補となっている、ローカルテレビ局の経営見直しを迫ります。地方銀行の経営見直しとともに、地方創生に繋がる重要な政策になると思われます」

楽天モバイルに今後、優良な電波が割り当てられていくのか。それはわたしたちのスマホ料金というミクロな問題だけでなく、地方創生などマクロな問題へもつながるという。スマホ料金は小さくも大きな問題だった。