日本では見られなくなってしまった光景が広がる

ランカスターのノスタルジックな風景も大好きですが、私がメインでフィールドワークをしているアーミッシュカントリーは、オハイオ州にあります。

オハイオ州にはホルムス郡という、ランカスターと同じくらい大きなアーミッシュコミュニティがあります。アメリカの北部に位置するため、冬場はしっかりと雪が降り、気温が氷点下を下回ることは当たり前となるため、春・夏・秋を中心に訪れています。

公共の交通機関がないため、移動はもっぱらレンタカー。道路を走っていると、多くのアーミッシュの日常生活を垣間見ることができます。

野菜スタンドで作物を販売している男の子や、馬を引きながら畑を耕す麦わら帽子姿の男性、大きなお弁当バッグを持ちながら下校してくる子どもたち、お母さんに手を引かれながら歩く裸足の小さな女の子、軒先で手作りのアーミッシュキルトや服を干す女性たち……。

どれも日本では見慣れない光景で、絵本の世界に迷い込んだかのような錯覚を覚えます。文明の利器やテクノロジーに頼らずに、父・母・子ども・親類・隣人同士・友人同士が、協力し合いながら生活している様子が目の前に広がり、こちらまで温かい気持ちになるのです。

自然の景色やアーミッシュの馬車など、物理的な風景ももちろん美しいのですが、それ以上に、家族の絆や人々の助け合い、便利なものに頼らずに昔ながらの方法で工夫しながら暮らす姿などに、私は「美しさ」を感じ、心を打たれます。

私たち日本人も、戦前はこんな暮らしをしていたのではないでしょうか? 彼らの姿を見ていると、私たちが忘れてしまった大切なものを思い出させてくれるような、心が洗われる感覚を覚えます。

▲幼い頃から馬に親しみながら育つアーミッシュ