新型コロナウイルスの感染拡大により、日本もまた大きく揺れています。そんな状況下で問われているのが「日本企業」の進むべき道。果たして日本は欧米型の「個人主義」を推し進めるべきか、あるいは本来の“助け合いの精神”に立ち戻るべきか、その決断の時が迫っています。

そこで今週も、建設省(現国土交通省)に入省後、道路局長などを務め「道の駅」の制度化などに尽力。その後、東京大学特任教授、京都大学大学院特命教授、早稲田大学客員教授を歴任し、現在は『大石久和のラジオ国土学入問』(ニッポン放送)でパーソナリティを務める、国土学総合研究所所長で作家の大石久和さんに、「国土学」の観点から、日本古来の国民性の重要性についてわかりやすい言葉で解説いただきました。

財政の健全化」という呪縛に縛られるな!

〇前回はコチラ

新保アナ(以下、新保) 前回、今後は日本がコロナショックを機に、“財政再建至上主義”と“プライマリーバランス重視”というスタンスを捨てることができなければ間違いなく三流国に転落する、というお話がありました。その原因となっている財務省、ある意味で特殊なこの組織の特性について、広くいろいろな省庁をご覧になられてきた大石さんは、どのような印象をお持ちでしょうか。

大石氏(以下、大石) 財務省の人間に言わせると、「私たちは『財務省設置法』に基づいて忠実にそれを実行しているだけ」ということなんです。これは非常に有名な話ですけど、2001年に大蔵省から財務省に変わるとき、国は大蔵省時代にはなかった役割を財務省に持たせたのです。

新保 それは、どのような役割なのでしょうか。

大石 財務省設置法には「財政の健全化を図らなければならない。財務省というのは財政の健全化を図るために存在するんだ」と書いたのです。以前の大蔵省のときは、シンプルに「財政を担当する」という書き方だったんですが、「健全化」という言葉が設置法にはあるんです。だからこそ、彼らからすれば「私たちは設置法に忠実に行動しているだけですよ」という答えになるんでしょうね。

新保 そうなんですね!

新保 まさに、今回のコロナ禍で思い知らされているところですね。

大石 それと、これは決して財務省の悪口ではありませんが、財務省という組織は一枚岩なんです。皆さん一様に「消費税を上げなければなりませんよ、プライマリーバランスを守らなければいけないですよ」とおっしゃる。一方で、よその省庁……たとえば特に経済産業省などは、一人ひとりの考え方がかなり違うんですね。極めて多様性に富んだ人間で構成されているんです。ところが、財務省というのはもう金太郎あめのように、「財政緊縮、消費税増税、絶対!」という一枚岩の体制になっているわけです。つまり、「設置法に忠実に行動している」というのが根本ですから、財政再建至上主義を捨てきるには、この設置法を変えないといけないでしょうね

▲元官僚でもある大石氏の鋭い財務省分析は参考になる

新保 つまり、根本的な部分を改善しない限り、財政の「健全化」という部分に縛られて柔軟な対応は難しい、日本の変革は難しいということでしょうか。

大石 そうですね、難しいかもしれません。本来であれば、政治がそれをしなければいけないのですが、政治自体が財政の「健全化」に擦り込まれてますから……。