本部だけは儲けられるドミナント戦略

開業後、ようやく店舗が軌道に乗って、これからという時に、あなたの店舗の近隣に次から次へと同一チェーンの店を出店してきたら、どうなるであろうか。当然、売上は減少し、あなたの店は危機的状況に陥るだろう。

しかし、フランチャイズビジネスにおいて、特にコンビニでは、この同一チェーン店の近隣出店は頻繁に行われることが多い。このような近隣出店のことを、ドミナント戦略という。ドミナント戦略とは、一社の店舗を集中的に出店することで、その地域でより高い市場占有率を奪おうとする戦略である。

簡単にいえば、A店という店舗の近隣にB店を出店し、A店やB店の近隣にC店を出店というように、同じ地域に次々と出店を繰り返して、同一チェーンが支配する商圏を拡大する戦略である。

どうして、このような出店が行われるのかといえば、

  1. 地域に同じチェーンの店が集まるため、フランチャイズチェーンの認知度が向上し宣伝効果が高まる
  2. 近くて便利なお店が増えれば顧客の来店頻度が向上する
  3. 物流効率の向上
  4. 経営相談サービスの質の向上

以上の4点が理由として挙げられる。

物流効率の向上とは、コンビニなどでは、必要な商品をバラで配送する小分け配送が行われているが、特定の地域に店舗が集中しているから可能となっている。

そして、経営相談サービスの質の向上とは、店舗の近くに店舗があれば、店舗巡回指導員(スーパーバイザー)が巡回できる店が増えて、効率よく店舗指導を行うことができるというわけである。

ドミナント戦略によって本部が得られるメリットは、これだけではない。ドミナント戦略によって、本部は増収になる場合が多いのである。本部がA店の近隣にB店を出店したとする。また、各店舗のロイヤルティは収益の60%とする。

A店は収益100万円の店舗であったが、近隣にB店が出店された結果、A店の収益は40%減の60万円、B店の収益も60万円に留まった。この場合、A店からすれば収益が40%減少となって大きな痛手になるが、本部はA店とB店からのロイヤルティ収入は20%増の72万円である。

本部は既存店の売上が少々下がっても、近隣出店をした方が得なのである。だから、ドミナント戦略が行われているのである。

▲本部だけは儲けられるドミナント戦略 イメージ:PIXTA

加盟店にとっては対策のしようがない

加盟店オーナーは多額の借金をして、夫婦二人でコンビニの店舗を始めた場合が少なくない。こんな夫婦の店舗の近隣へ次から次へと本部が新規出店をし、売上がガタ落ちとなって、生活もままならなくなってしまった。

こんなことがコンビニ業界では起きているのである。このドミナント戦略による近隣出店によって、心が折れ、精神的に参ってしまう加盟店オーナーは少なからずいる。

ドミナント戦略による近隣出店が、どれだけ恐ろしいもので、加盟店がこれに抗うことが難しいかについて、少し想像してみてほしい。

あなたは、ある小売店のオーナーであると仮定する。ある日、あなたの店舗の近隣に同じ業種の小売店が出店された。あなたの店舗の売上はどうなるであろうか。多くの人は、売上は下がると予想するであろう。

もちろん、この場合でも、サービス・品質・品揃え・値段など店舗に違いがあれば、企業努力で売上の減少は防げるかもしれない。

それでは、もし近隣に出店された店舗が、あなたの店と瓜二つの店舗であった場合は、どうであろうか。サービス・品質・品揃え・値段などが全く同じ店舗が、出店された場合である。これには対処しようがないと答える人が、ほとんどであろう。これが、ドミナント戦略による同一チェーンによる近隣出店の問題なのである。