野球の本質は「プレイボール!」
川﨑さんは、若い世代や子どもたちに、無理をしてまで野球を好きになってもらいたくはない、と考えている。
「野球を嫌いになったことは、いっぱいあった。少年野球のときにキャプテンをやって、九州大会、全国大会にも行った。メダルをいっぱいもらってね。でも、監督が厳しかったし、僕もキャプテンだから同級生に厳しくした。楽しくなかった。『勝ち』が楽しいと思ったら大きな間違いなんだ。勝てば幸せってものではないんだよ。だから僕は1回野球をやめて、バスケに行った」
近年、少年野球人口が減少していると言われる。川﨑さんは、子どもの頃から勝負にこだわりすぎることに原因があるのでは、とみている。
「人生で『勝つ』なんてことはないんだから。それに野球はしょせん野球なんだよ。武士道とか『道』が付くやつは『はじめ!』で始まる。礼に始まり礼に終わる。でも野球はそうじゃない。『プレイボール!』だよ。ボールで遊びなさいと。遊ぶんだよ。それを勘違いして、武士道とか『はじめ』でやってるから、勝ち負けを気にするし、勝負にこだわりすぎる。子どもたちが野球をイヤになって、やめていく。これはもう当然。子どもたち、偉いよ。それが正解なんだから」
それでも、野球が面白ければいずれ帰ってくる。そのための環境を作ることが大人の役目だという。「野球というスポーツで、いかに自分自身と向き合わせるか。子どもたちが、自分で喜んだり悔しがったりできるかが大事」。
川﨑さん自身の言葉にもあったが、流れに「身を任せる」こと。なかば強引に結びつけるならば、これが「土壇場」に対する川﨑さんのスタンスといえそうだ。
「踏ん張らなくていい。転んでいいの。その代わり、転び方を覚えてね。自然に転べば、きれいに立ち上がれる。踏ん張るとね、やっぱり力が入ると転んだとき大ケガになっちゃうから。力を抜いて」
それは野球に限ったことではないという。
「会社も休んでいいんだよ。辞めてもいい。今やれることをやる。『野球選手になりたい』っていうのも、なれるときはなれるし、なれないときはなれない。それが人生なの。野球は残酷だから、何が起きるか分からない。自分の感性を大事に生きていれば、必ずあなたが進む方向にあなたの道ができる。それが野球選手なのかもしれないし、電気屋かも知れない。それははたして誰も分からない。ノーバディ、ノウズ。だから力を抜いたほうがいいよ」
これまでの野球人生を振り返ってみれば「運がよかった。運しかなかった」と笑う川﨑さんだからこそ、たどり着いた境地なのかも知れない。
≫≫≫ 後編へ続く
「スナックムネ」参加者募集中!
川﨑宗則がオンラインでファンと交流!実際にムネリンと話せる時間も!?
https://eplus.jp/sf/s/page/irg/snack-mune
※定員に達し次第募集を終了いたします。