日光を求め人々は外へ出て短い夏を楽しんだ
5月1日まで有効とされていた緊急事態宣言は2週間延長し、5月17日に解除された。春が訪れ暖かい日が続き、川沿いで日光浴をする人、庭先でバーベキューをする人が増え、近所を歩けばどこからともなく肉を焼く香りが漂ってきた。
博物館や映画館など今まで閉鎖していた施設が営業を再開し、小規模でのイベント開催の許可も出た。6月にもなれば新型コロナウイルスのことはすっかり忘れ、人々は夏を楽しむことに夢中。EU圏内での国境も開放し始め、街では久しぶりの観光客を見かけるようになった。
気候や気温が関係しているのかは不明だが、夏の間は感染者が1日1桁、またはゼロの日が続いていた。
新型コロナウイルスの感染拡大第2波を懸念し、一時はEU圏外からの留学生受入れ中止が議論されたが、例年通り留学生を受け入れた。これにより感染者が急激に増えることもなく、第2波は本当に来るのか? と思ってしまうほど、街の雰囲気は緊急事態宣言前と同じように戻っていた。
念のためのマスクの着用、店先でアルコール消毒、2mの社会的距離を保つ人はほとんど見られなくなったのだ。
第2波到来? 感染者が爆発的に増加中
秋が過ぎ10月に入ってから、じわりと感染者が増え始めた。11月に入ってからは感染者が1日に200人を越える日が続き、公共施設内でのマスク着用の推奨、“2+2”ルールが再び適用されることになった。
街を歩くとマスクを着用する人は増えたように感じるが、着用率は30~50%といったところだ。友人同士であろう2人以上のグループもあちこちで見かける。半年前はマスクやアルコール消毒液を求める人であふれ、街は人がおらずガラガラであったが、すでに危機感が無くなってしまったようだ。
「若い人は感染しても重症化しない」
「感染したらしたで仕方ない」
「そもそもテストの信憑性が低い」
と言ったことを頻繁に耳にするようにもなった。人混みを避け、感染者数を気にしている私のほうが少数派なのかもしれない。
エストニア政府組織、厚生情報センター(Tervise ja Heaolu Infosüsteemide Keskus)により、感染者との接触確認アプリ“HOIA!”もリリースされた。このアプリをダウンロードし感染の有無を登録することにより、匿名にて他者との情報共有が可能になる。
アプリをダウンロードした感染者と、最大2m以内に15分以上接触した際に通知が来る設定となっているが、具体的な時間や場所は表示されない。
現在エストニアには、アプリをダウンロードできる端末が約40万台あり、ダウンロード数は20万回を越えている。
街ではクリスマスに向けイルミネーションの飾りつけがされている。1年で最も盛り上がるイベントであるクリスマスは、エストニアでは家族と集まり食事をとる習慣がある。
現在の規制では、飲食店での食事は1グループ10人以下となっているので、例年通り家族での食事会が開かれるであろう。クリスマスマーケットも規模を縮小し開催される予定であり、政府も前回のように経済活動を厳しく制限しないよう、ギリギリの状態で見極めていることが伺える。
短い日照時間に加え、寒さが厳しい12月のエストニア。せめてクリスマスだけは明るい気持ちで迎えたい。そして全ての海外在住者が思っているであろう母国への一時帰国が、一刻も早く実現することを願うばかりである。
1988年生まれ、新潟県出身。大学生の頃から海外で異文化に触れる楽しさに目覚める。卒業後に就職した会社を3年で退職し、フィリピンで英語を学ぶ。27歳の時にワーキングホリデー 制度を利用しオーストラリアへ渡りエストニア人の夫と出会う。結婚を機に2018年エストニアへ移住し、2人でのんびりと暮らしている。趣味はジョギングと料理。好きな言葉は"医食同源"