声を出せなくても楽しめるライブにしたい(小島はな)

メンバーにはプレッシャーをかけるので言わなかったが、第1部が終わったあと、スタッフには率直な意見を告げた。

「すでに満足感でお腹いっぱいなんですけど、ここまでハードルを上げちゃって、第2部、大丈夫ですか?」

それを聞いた振付のAnna先生は「当然、被ってくる楽曲もありますけど、まったく違う見せ方をしますから大丈夫だと思います」と答えてくれた。

周辺取材をしてみると、このライブに向けて、かなり厳しい指導もしてきたようだ。実力もついてきたし、勢いも出てきた。そんなタイミングだからこそ、油断することなく、ビシッと引き締めて、いま一度、足元をしっかりと固める……周りのスタッフがそうやってシビアな部分を常に持っていてくれるのは、とても恵まれた環境といえるだろう。小島はなにもいっさいの自己満足などなかった。

▲さまざまな感情をステージ上で表現できるようになった

「8月から有観客ライブを再開することができましたけど、ずっと同じことを続けていたらいけないと思うんですよ。お客さんは、マスクを着けたままで声も出せないわけじゃないですか? 似たようなライブばっかりやっていたら、お客さんだって飽きてしまうし、声を出せなくても楽しめるライブをお届けできるようにしなくちゃいけないなって。いろいろ挑戦することで、私たちの幅も広がっていくと思うし……」

事実、第2部はただ単に楽曲を披露するだけではなく、そこにちょっとした演出を加えることで、ショー的な要素が多分に含まれていた。そして小島はなが言った「声を出せなくても楽しめるライブ」も、かなり現実的なものとなってきている手応えがあった。

少なくとも僕は「あぁ、聴いているだけでも、観ているだけでも満足できるライブだな」と感じた。もちろん、ファンからしたらコールを飛ばして楽しみたい楽曲もたくさんあっただろうが、おそらく、しばらくはマスク着用&コールNGの公演が続くことが予想される今、これまでと違う楽しみ方をメンバーが考えてくれていることは、観客としても幸せなことだと思う。

▲「声を出せなくても楽しめる」を体感させてくれたライブだった