新型コロナウイルスの対応では、世界の中でも対策の有効性が高いとされているオーストラリア。CNNによると、西オーストラリア州では先月末にロックダウンに入るなど、今も制限された状況で人々は生活しているようだ。ここでは、現地在住者がオーストラリアで体験した隔離生活や、新しい生活スタイルで暮らす人々の様子を紹介する。

シドニーでの14日間の隔離生活

世界が新型コロナウイルスの影響でロックダウンを始めていた2020年5月に、私は唯一残っていた羽田とシドニーを結ぶフライトに乗り、里帰りしていた日本からオーストラリアに帰ってくることができた。

▲キャンセルだらけの電光掲示板

新型コロナウイルス感染を防ぐために、オーストラリアでは3月に国境を封鎖しており、国民と永住権を持つ人しか入国ができなくなった。ゴールデンウィークなのに誰もいない空港、キャンセルされたフライトで埋め尽くされた電光掲示板を見たのは、生まれて初めてだった。

チェックインの際にオーストラリアでは2週間の隔離生活をしなければいけないこと、それに同意しなければ飛行機に乗れないこと、永住権を持っていることを何度と確認され、やっと搭乗を許可される厳重ぶり。機内には18人の乗客しか乗っておらず、不気味なほど静かで、これが現実で起きていることなのかわからなくなったほどだ。

▲人が乗っていない飛行機でオーストラリアへ

無事にシドニーに到着すると検温・問診を受けて、そのまま警察官や軍人に囲まれながらバスで指定のホテルまで案内され、14日間のホテルでの隔離生活が始まった。

部屋から一歩も出られず、窓も開かない隔離生活は意外と快適で、人と会わないだけでこんなにもストレスを感じない生活ができるのかと驚いたほどだ。食事は朝・昼・晩・おやつと4回ドアのところに置かれていて、足りなければデリバリーも頼むことができる。

アレルギーや宗教上の理由で食べられないもの、ヴィーガンなど事前に伝えておけばその人に合った食事が用意される。毎日必ず炭酸飲料とスナック菓子が付いてくるあたりはオーストラリアらしかった。

スマホで1日の歩数を測ってみたら50歩と運動不足気味になったが、部屋には無料のWiFiやTVもあり、窓から見えるシドニー中心街の景色は見ていて飽きることはなく、特に不便なことはなかった。

▲隔離生活で出された食事

しかし、人によっては閉鎖的な空間に耐えきれずホテルから脱走したり、精神的にかなり負担があったとのニュースも目にした。私はというと、誰にも邪魔されず本を読んだり、ネットをしたり、心ゆくまで寝ていたりと久々に学生時代に戻ったかのような時間だった。

オーストラリアの新しい生活スタイル

14日間の隔離生活が終わった後は、フライトで自分が住んでいるブリスベンへと向かった。しかし州境は封鎖されていて、事前に許可証を取得していなければ移動はできない状態。そして許可証を持っていても、州をまたいだ先で14日間の隔離生活をしなければいけないなど厳しい制限があった。

私はすでに隔離生活を終えていたので、特別にブリスベンでは免除され空港からすぐに家に帰ることができたが、ブリスベンの家に戻ってからは、今までとは違った日常が待っていた。

レストランは店内に入れる人数が面積によって決まっており、テイクアウトがメイン。店内で飲食をする場合は、入店前に店側が用意したノートに名前・電話番号・住所・滞在日時を記入、もしくはQRコードを読み取って専用ページに入力しなければならない。

店員がノート、もしくはスマホの入力画面を確認してからじゃないと入店はできない。ノートの場合、個人情報がダダ漏れだったが、もしも店内で感染者が出た場合、追跡しなければならず、感染が広がれば再び店が閉まってしまうことを考えると皆、素直に書いていた。

レストランによってはテーブルにQRコードがあり、それをスキャンするとそこから注文・支払いが可能で、人の動きを最小限にしようと試みているところもあった。

▲レストランに掲示されたQRコード

学校は休校となり、自宅からのオンライン授業が主流となった。もともとオーストラリアは、どの街に住んでいても平等にどの教科も受けれるようにと(地方では教員が足りずに専門的なスキルを必要とする科目が行えない)、オンライン授業をしていたこともあって、日本ほど現場が混乱することはなかった。

エッセンシャルワーカー(医療従事者・スーパーの店員・福祉関係者など)が家族にいる子どもは、例外として学校に行くことを許可されていた。子どもが家にいると親が仕事に行けないためである。

ジムは完全予約制になり、滞在時間は1時間厳守。時間制限があるので、スマホをいじりながらダラダラと運動をしている人は減ったように思う。

除菌シートもあちこちに置かれて、器具を使う前、使った後は必ず拭いたり、タオルを持参しなければジムの利用ができなくなったりと、清潔面がかなり向上して人々の意識の変化が見られた。他人の汗だらけの器具を見て、ため息をつくことがなくなったことが個人的には嬉しい変化だった。

新しい生活スタイルに、混乱しながらも慣れていかなければならない日々だったが、今まで改善が難しかった人々の意識の変化が、このように短期間で起こせたのはコロナの功績ではないかと思う。