日本と韓国の「竹島問題」に長年取り組む竹島研究会の下條正男氏が、いったいどこに問題があるのか、解決しないポイントはどこなのかを、これまでの経緯や双方の主張を紹介しながらわかりやすく解説する。
※本記事は、下條正男:著『竹島VS独島 -日本人が知らない「竹島問題」の核心-』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
「独島はわが領土」の替え歌
2019年、日本でも話題となり、日本国内の興行収入45億円超、観客動員100万人超を達成した韓国映画『パラサイト 半地下の家族』。米・アカデミー賞では外国語映画として初めて作品賞に選ばれ、計4賞を獲得するなど高く評価された作品だ。
この映画のなかで、主人公一家の長女がエリート女性・ジェシカになりすますため、ニセのプロフィールを歌に乗せて暗記する場面がある。映画ファンから「ジェシカソング」と呼ばれるこの歌は、韓国では有名なある歌のフシに歌詞を乗せた「替え歌」である。
その元歌とは『独島はわが領土』だ。1982年、コメディアンのチョン・グァンテが歌ってヒットし、90年代には韓国の小学校の教科書に載るまでになった。韓国でこの歌を知らない人はいない、そういっても過言ではないほど国民に浸透している。
「独島」とは「竹島」の韓国名である。『独島はわが領土』の歌詞には、独島、つまり日本領である竹島を“韓国領である”とする韓国側の言い分に沿って、島の基本的な情報や韓国側の主張する「歴史的根拠」が盛り込まれている。
挙げている歴史的根拠は間違った解釈によるものだが、韓国人の多くはこの歌を“歴史的に正しいもの”として認識しており、誰もがそらんずることができる。映画内でパロディとして口ずさむだけで「あの歌だ」とわかるほどなのだ。もちろん、韓国人のほとんどはメロディだけでなく歌詞も暗記している。
- 鬱陵島東南、船で200里/寂しい島ひとつ、鳥のふるさと/誰が何といおうが、独島はわれらの地
- 慶尚北道鬱陵郡南面島洞1番地/東経132、北緯37、平均気温12度、降水量1300ミリ/独島はわれらの地
- イカ、イイダコ、タラ、メンタイ、カメ/サケの子、水鳥の卵、海女の小屋/17万平方メートル、井戸ひとつに噴火口/独島はわれらの地
- 智證王13年、島国・于山国/世宗実録・地理志50ページ3行目/ハワイは米国の地、 対馬島は日本の地/独島はわれらの地
- 露日戦争直後、主無き島と/勝手に言っては困ります/新羅将軍・異斯夫、地下で笑っている/独島はわれらの地
- 鬱陵島東南、船で200里/寂しい島ひとつ、鳥のふるさと/誰が何と言おうが、独島はわれらの地
アカデミー賞受賞後、ポン・ジュノ監督や出演者たちは大統領府に招かれ、文在寅大統 領夫妻との昼食会に参加した。その席で、こんなやり取りがあったという。
文大統領「ジェシカソングのメロディや歌詞は誰が決めたのですか?」
俳優パク・ソダム「監督が……」
ポン・ジュノ監督「日本の観客も歌っているそうですよ」(一同大爆笑)
FNNプライムオンライン(2020年2月21日)
映画を鑑賞し、高く評価した日本人も多かったことを思えば、このやりとりは笑いごとでは済まないだろう。「元歌は『独島はわが領土』なのに、日本人は気づきもせず歌っている」と笑われているのだから。