かつての宗主国のお菓子文化が各国で根付いている

アルゼンチン『お菓子からも伝わってくる、豊かさと移民のチカラ』

“南米のパリ”と称されるブエノスアイレスを首都に持つアルゼンチンは、南米各国の若者たちが「いつかは行ってみたい」と憧れる、華やかで活気のある国。

実際、ブエノスアイレスにはヨーロッパの大都市を思わせる街並みが広がり、パティスリーをはじめとして、カフェやレストランもこだわりのあるお店ばかり。

南米を代表する焼き菓子のアルファフォーレスは、やっぱりこの国でも人気者で、多くのお菓子に欠かせない、南米版キャラメルクリームのドゥルセ・デ・レチェも小さな瓶詰めから大きなバケツ入りまでが、商店に並んでいました。

さらに、お菓子も含めたアルゼンチンの食文化で印象的だったのは、移民のチカラ。

たとえばイタリアにルーツを持つお菓子や、ピザ、パスタのお店も多く見かけ、南米の他の国と比べると、よりインターナショナルな空気が漂っていました。

▲アルゼンチンの食文化で印象的だったのは、移民のチカラ

ウルグアイ『南米で2番目に小さな国にも、充実の焼き菓子文化が』

スリナムに次いで南米大陸で2番目に面積が小さい国、ウルグアイ。隣国のブラジル、アルゼンチンと比較すると、落ち着いた雰囲気が漂っています。

なかでも印象的だったのは、世界遺産の町、コロニア・デル・サクラメント。

ポルトガルとスペインに代わる代わる支配された歴史をもつこの町は、アルゼンチンのブエノスアイレスからフェリーでほんの1時間程度にもかかわらず、都会の賑わいや喧噪とは無縁。

素朴で、穏やかで、町中をモリモリと覆う緑の多さが印象的です。

小さな町のため、カフェもパティスリーも数軒程度でしたが、定番のアルファフォーレスから、ウルグアイならではのものまで、焼き菓子が非常に充実していたのが驚きでした。

▲定番のアルファフォーレスから、ウルグアイならではのものまで、焼き菓子が非常に充実

チリ『スペインのみならず、ドイツをルーツとするお菓子も』

南北の長さ約4,300kmに対して、東西の幅は平均で約175kmという細長い国で、西と南は太平洋に面した海洋大国です。日本人にとって最も嬉しいポイントはフレンドリーな国民性だけでなく、海鮮料理の美味しさかもしれません。

首都サンティアゴの市場には水揚げされたばかりの魚介が並び、併設されたレストランでは、新鮮な海鮮料理をたっぷりと堪能できます。お菓子は他の南米諸国と同様に、旧宗主国であるスペイン由来のものがほとんど。

また、政治・経済など、チリの歴史にドイツ系移民も大きな影響をもたらしたため、しばしばドイツ由来のお菓子に出会えるのも、この国ならでは。

一方、チリの領土ながら、首都サンティアゴから航路で6時間もかかる、モアイ像で有名なイースター島では、なんとバナナのお菓子を発見しました!

▲チリはスペインのみならず、ドイツをルーツとするお菓子も

ペルー『素朴な焼き菓子と洗練されたスイーツが共存』

南米諸国の中で、日本と最初に国交を樹立した国としても知られています。

食文化で特筆すべきは、ジャガイモ、トマト、トウモロコシの原産地であること。これらを使った伝統料理がメジャーですが、アマゾン、アンデス、太平洋岸地域と3つの気候区からなるペルーでは、食文化をひとくくりにして語ることは至難の技。

お菓子は他の南米諸国と同様、旧宗主国のスペイン由来の、素朴な焼き菓子が大半。首都リマや、世界遺産の街クスコでは、洗練されたスイーツの存在も目立ちました。

ブラジル『南米で唯一、ポルトガルのお菓子文化が息づく国』

南米大陸で最大の面積を占める国、ブラジル。

スペイン統治下にあった他の南米諸国とは違い、旧宗主国はポルトガルで、アメリカ大陸で唯一の、ポルトガル語圏の国としても知られています。

食文化は多様で、先住民インディオとポルトガルの食文化、そして各国からやって来た移民の食文化の広がりとともに、地域によってさまざまに発展していきました。

お菓子文化も周辺の国々とは大きく異なり、パステル・デ・ナタをはじめ、ポルトガル由来のお菓子が大半を占めています。今や日本でも知られるようになったアサイーや、トロピカルフルーツを使った、ムースやフローズンドリンクなどの冷菓や氷菓も目立ちます。

▲ブラジルはポルトガル由来のお菓子が大半を占めている