トランプがテロ組織だと名指しした理由

先にお話しした通り、ANTIFAのロゴマークは赤と黒の旗を組み合わせてできています。この2つの旗は、1930年代の発祥当時は、両方とも赤色でした。

この赤が何を示しているかというと、共産主義と社会主義です。つまり、ANTIFAはそもそも、国家を共産主義化あるいは社会主義化しようとする革命運動です。

現在、一方の旗が黒色に変わっています。赤はそのまま共産主義です。では、赤から変わった黒は何を意味しているのでしょうか。なんと、アナーキズムつまり無政府主義です。現代のANTIFAは、発祥当時よりもさらに過激に共産主義の実現を目指す思想となっているのです。

▲1930年代のドイツの反ファシスト運動のロゴマーク 出典:ウィキメディア・コモンズ

トランプがテロ組織だと名指しした意味がおわかりになるでしょう。共産主義の実現を無政府主義をもって目指すのですから、ANTIFAを掲げたデモ活動が暴動と破壊、略奪に走るのは当然です。

ANTIFAによる「反ファシスト」の理屈はこうです。警察の出動を潰そうとするのは、警察がファシストだからです。通りの商店を破壊して略奪するのは、商店が資本主義のファシストだからです。彼らは、自分たちが気に入らないもの、つまり革命と共産主義化をはばむものにすべてファシストのレッテルを貼って排除しようとします。

たとえば、2020年8月の共和党全国大会でトランプ大統領は「法と秩序」ということを盛んに言いました。ANTIFAにとっては、トランプが「法と秩序をもって、アメリカ国民が尊厳を持ち、安全で平和に暮らせるよう、その権利を必ず守る」と述べること自体が独裁行為であって、トランプを潰す理由になります。なぜなら、彼らは無政府主義を掲げているからです。

ANTIFAの行動原理は、ダイレクト・アクション(直接行動)です。物事の解決のためには話し合い、つまり議論は無駄。警察の力を借りたり、適当な法律をつくってもらうこともまったく無駄。手段を問わず、自らが直接的に動く。効果があればなんでもいい、対人対物の犯罪はなんでも許されるし、人命さえ奪っていい、という思想で動きます。

このような思想原理が生き続けているのは、アメリカ民主党の分断政治の「成果」であると言うことができます。国民の生活状態を分けに分け、それぞれを被害者に回していって対立を煽り、被害者の救済という課題をつくり出していくことで政治を動かす作戦は、アメリカ民主党ばかりでなく日本を含めた世界中の左翼政党が伝統的に得意としているところです。

被害者である以上、その被害の原因を壊滅するために戦わなければいけないし、戦う使命があるとANTIFAは考えるわけです。