こんにちは、獣医師の北澤功です。少しずつ暖かくなってきて、春の陽気が近づいてきていますね。今回は、生き物たちの遺伝子を残すための戦略や、動物たちが野生化でみせる、さまざまな愛のカタチについて話をさせていただきます。
春になると動物園の人気者になるクジャク
「クジャクさーん、羽を広げてよー!」春のクジャク舎の前では、子どもたちの元気な声が響き渡ります。クジャクがリクエストに応えるように羽を広げると「うわぁ~」と大歓声があがりました。
普段はあまり人気があるとは言い難いクジャクですが、新しい羽が生えそろう春から夏にかけては話は別。きれいな羽を見ようと多くの人が押し寄せます。
羽を扇の形に目一杯広げるのは、オスがメスに「俺は強いぞ、きれいだろ、かっこいいだろ」と求愛のアピール。目玉のような模様がいっぱいあり、一本一本の羽が生えそろって、立派できれいなほうがモテます。
きれいな羽が生えそろうということは、栄養状態が良くて寄生虫などもついておらず、他のオスとのケンカにも勝った証拠。メスは強いオスの遺伝子が欲しいため、立派できれいな羽をもつオスに惹かれます。面白いことに、模様には流行りがあるらしく、時代によってモテる模様が変わるんだそう。
気に入ったオスが見つかるとメスは交尾をして卵を産み、子育てを始めます。オスは子育てにまったく興味なし。自分の遺伝子をたくさん残すために、すぐに別のメスに盛んに自分をアピールします。
しかし、7月ごろになると、羽は抜け落ちてしまうのです。羽が抜け落ちるまでに、どれだけたくさんのメスと交尾ができるかが、クジャクのオスにとっては大事。自分の子どもをいっぱい作ることによって、そのなかの9割が死んでしまっても、1割が育てばいいという遺伝子をばらまく戦略です。
一方、ばらまき戦略とは逆に、1羽だけと交尾をする動物もいます。それがフクロウです。フクロウは1羽のメスとペアになり、卵を産み抱卵中のメスにせっせと餌を運び、天敵から守り、子育てに協力します。
たくさんの遺伝子をばらまくのではなく、大好きなメスとの子どもを、大切に育てることにより、自分の遺伝子を残す戦略なのです。
子育てに協力するオスは、たいてい見た目が地味。逆に、遺伝子をばらまくオスは、たいていメスより派手な見た目をしています。子育て中は危険がいっぱい。天敵に目立たないことが大事なため、子育てを手伝う鳥は地味な色合いが多いのです。