夜明け配送・ロケット配送で簡単に購入できる食材

外食が減って自宅での一日三食やおやつ、そして飲み会までステイホームになったことから、主婦にとって食事の支度に関する負担は倍以上に増えた。

学校給食の大事さをしみじみと感じる今日この頃である。食材の消費も以前よりずっと増えたが、人が大勢いる大手スーパーマーケットに行く代わりに、前日に注文すると翌日の夜明けにドアの前まで届けてくれる「新鮮食品の夜明け配送サービス」を愛用するようになった。

世界最高のスピードを誇るという韓国の流通・物流システムは、新型コロナの流行以来、このサービスで頂点を極めた。Kurly,Cupangなどで代表される企業は、厳選された販売業者からの良質な食材料を、冷蔵・冷凍を問わず梱包状態で翌日の夜明けにドアの前まで届けてくれる。

そのおかげで朝食には新鮮な材料を使うことができる。ほかにも、オンライン注文してから2〜3時間後、遅くとも当日内に商品が届けられるロケット配送サービスもよく利用するので、外出を控えても物資の調達という面では全く不便を感じない。

▲韓国流通業界における熾烈な配送競争

また、新型コロナで輸出先がなくなり困っている地域農家を助けるために、自治体が販売する良質のジャガイモやアスパラガスなどを入手したりもした。

特に日本などへ輸出されていた、江原道(カンウォンド)産の最上品アスパラガスの味や品質が、ネットで大きな話題になっていた。しかし、手ごろな価格であったことやネットの口コミにより、各自治体のゲリラ販売サイトで農産物を注文することは、人気音楽グループBTS(防弾少年団)のコンサートチケットの予約よりもさらに熾烈だった。

このような競争に加わる自信がない場合は、自分が住んでいる地域の区役所や市役所で開かれる、農畜産物のドライブスルー販売を利用することもできる。感染の恐れもなく、中間流通マージンをなくして小売商店よりずっと安く、優れた商品を購買できるということから、短時間での完売記録を続けていた。

さらに、地域教育庁から送られた食材パッケージも役に立った。

オンライン授業の拡大によって学校給食が減ったのだが、この給食用食材の需要がなくなり困っている企業や、食費の増加で悩んでいる家庭を助けるため、全国の各教育庁は各学生の家庭へオーガニック食材で構成されたパッケージを1〜2回届けたり、農畜産物共同組合モールで現金のように使えるポイントを支給したりした。

▲京畿道(キョンギド)教育庁から届けた給食材料パッケージ

 非対面デリバリーで安心できる買い物と外食生活

みんなが家の中にいる時間が長くなっただけに、食材料はもちろんのこと、さまざまな日用品の消耗量も増加した。そのためネットショッピング業界は前例のない好況を迎えているが、これには韓国の独特な配送文化も追い風になったと思う。

大団地アパートなど共同住宅生活が一般的な韓国では、かなり前からネットショッピングで注文する際、配送要請欄に「ドア置き(置き配)」を記入する人が多い。

プライバシー保護や、不在時に代わりに受け取る人がいない理由でドア置きが好まれたが、商品の紛失や盗難率が少なかったため配送業者と消費者間の相互信頼を基にしたドア置きが一般化したのだ。新型コロナが流行してから、このアンタクト(Untact=非接触)デリバリーは当然のルールになっている。

この「ドア置き」文化の拡散は、料理の出前においても同様だった。

韓国では料理の出前マーケットは「配達の民族」「ヨギヨ」「Cupang Eats」の3強の構図だが、注文オプションに「ドアの前に置いてからベルを押してください」とか「ベルは押さずにドア置きしたあとSMSでお知らせください」など、いろいろなオプションで受け取り方法を選択できるため、安全かつ便利な料理出前サービスがおおいに盛り上がった。

出前料理までドア置きが普通になったことで、家でオンライン授業を受けている子どものために、職場で働いているワーキングマザーが安心してランチを出前で注文してあげることも可能になった。さらに出前を利用するとキャッシュバック〔2万ウォン以上の注文を4回すると1万ウォンキャッシュバック〕されるなど、政府も出前利用をサポートした。

しかし、このドア置きサービスの人気の裏では、配達・配送業に携わる働き手の労働環境の悪化という社会問題が浮上している。そのため家の中で便利さを感じながらも、同時に罪悪感に似たような負担も感じる。こんなことから配達勤労者に感謝の気持ちを表現する美談もネットで話題になったりした。

QRチェックインと体温計測の義務化

限定的ではあるが外食や買い物、映画鑑賞などの外出活動もたまにはする。

今では、訪れる先での体温計測や本人認証は当然の光景になった。距離保持2.5段階が発効してから、お店の入口に置かれた機器の前で熱を測り、スマホでQRコード認証をしてから店内に入ることができる。

本人認証のためのQRコードは、ネットポータルやモバイルメッセンジャーにアクセスして簡単に発行できる。スマホを持っていなかったり使用が苦手なデジタルデバイド層のために、手書きで名簿を作成したり、ARS認証方法を案内する。

このように出入りする客の認証や体温チェックが必須となっているため、感染者が発生した場合でも、移動経路や感染経路の把握は難しくない。自分が属した区域内で感染者が発生したら、自治体からの災害SMSで感染者の訪問先などが公開されるため、感染者と移動経路が重なった場合は、新型コロナ診断用の診療所に行けば無料で検査が受けられる。

政府の2.5段階措置によって、原則的にはカフェでの着席及び屋内での飲酒が禁止されているが、自営業者たちの経営難を勘案して、段階的に1時間以内の滞在を許可したり、営業時間を夜10時まで延長するなど徐々に緩和措置が行われ、以前よりはいくらか状況はゆるくなってきている。

しかし、感染の恐れや時間制限による心理的プレッシャーによって、多くの人は店内での利用よりはテイクアウトやドライブスルーを好む。非対面を好むトレンドによって、ドライブスルー店舗であるスターバックスDTは、2020年での年間利用件数が5割以上増えたという。