「健康管理のプラットフォーム」を掲げて、企業・健康保険組合・健診機関・個人を対象とした支援サービスを提供する株式会社バリューHR。企業や健保組合向けだけでなく、個人でも利用できる健康管理支援サービス「バリューカフェテリア」は画期的なサービスだが、創業社長の藤田美智雄氏はどのような未来を描いているのだろうか。

健康に取り組むとポイントをゲットできる仕組み

新保 株式会社バリューHRは、企業・健保組合・利用者・提携先医療機関すべてにメリットを与えている事業を展開されていますが、将来への展望について藤田社長に伺いたいと思います。さて、企業が健康診断を受けるように管理しなければならなくなったということですが、受診率を上げるのはなかなか難しいのではないですか?

藤田 企業は健診を義務化されたので受診奨励をするのですが、若いうちはみんな健康だから受けたがらないんですね。だいたい健康が気になるのは早くて40歳すぎ。それまでは健康診断に行きたくないので、人事考課で健康診断を加点減点の対象にするとか、インセンティブを設定するといった必要があるようですね。

なかには、健診を受けなければ昇給や昇格はしない、と就業規則で定めた会社もあるそうです。ニンジンをぶら下げたり、罰則をつくったりしながら、企業努力をしているようです。ただ、それが本来の姿ではないとは思うんです。

健康リテラシーを上げて、若いうちから将来のことを想定しながら健康データと向き合っていく。これからは、そういうことが必要だと思います。だから受診率アップの取組みは、ひとつのきっかけとして、とてもいいと思いますが、若い人たちへの情報発信も必要だと思います。

新保 健康リテラシーを上げていくために、どんな取組みをされていますか?

藤田 私たちは「くうねるあるく」というコンテンツを提供しています。もともとは、2018年にトーマツ健保を中心とした15の健保で共同保健事業を行って、私たちが受託したことから始まった共同事業プログラムです。2020年は新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに「くうねるあるく+ふせぐ」としてバージョンアップしました。

免疫や感染症予防についての関心が高まったのもあって、参加する健保組合や団体が増えました。これまでに延べ3万人以上が参加しています。

食事・睡眠・運動の3つの分野での動画セミナーと小テストで構成され、毎日配信されるメールマガジンと組み合わせて利用者の健康リテラシーを高めるようにできています。団体ごとに、インセンティブが設けられているのが特徴です。

小テストへの回答や、ウォーキングイベントでの成績に応じてインセンティブポイントを付与しています。1ポイント=1円で医薬品や健康家電、健康用品などに交換できるため、かなり好評なんですよ。

▲健康的な生活に取り組むほどポイントを得られるシステムは斬新

健康情報の履歴管理は電子化の時代へ

新保 コロナの影響で健康診断を控えた人も多いという話を聞きますが、いかがでしたか?

藤田 そのとおり、コロナ禍で2020年は健康診断の受診が低迷しました。それでも10%ぐらいの影響だったので、そんなに大きなダメージではありませんでした。ただ、こうした大きな感染症がいつ起きるかわからない、というのは頭に入れておかなければなりません。

個人の健康データを、電子情報として管理していくことは、ますます必要になっていくだろうと思います。国がいわゆるパーソナル・ヘルス・レコード、つまり電子データによる個人の健康情報を管理することを、一生懸命に進めようとしていますが、なかなか良いアイデアがないようです。

私たちは民間ですが、健康情報の管理とデータの活用で何ができるかが、これからの大きな課題です。究極の目標は「ピンピンコロリ」ですよね。健康を守って、健康寿命を延伸させる。高齢化しても元気に過ごせるようにする。その理想的な社会をつくるために、何ができるかを今、ずっと考えています。

新保 データをいかに健康増進に役立てるかということですね。

藤田 そうですね。私たちは健保組合を取引先にしているので、健診結果データのほかに、レセプトデータも持っています。そこに、ウエアラブル情報などを個人が入力していけば、さらにデータの精度が増していきます。健康情報を一元管理できる仕組みを持つ企業というのはまだないと思いますが、当社はかなり近いところにいます。

これを一企業だけではなく、日本全体で使ってもらえるようにするかというところが、今、最終のアイデア出しのところまできています。

新保 新型コロナのワクチンで、持病を持っている人にどうやって申告してもらうのかが難しいというニュースを見ましたが、社長のお話を伺っていて、そういうデータが活用できればいいですよね。

藤田 そうです。いろいろな関係者が絡んでくるとデータが出てこなくなってしまいますが、健保組合というのはエンドユーザーに近い立場でデータを持っているわけです。それを電子化することは、かなり有意義なことです。小さいときからいろんな予防接種を打つわけですが、記録は母子手帳しかないじゃないですか。

新保 本当にそうなんですよ。私が妊娠して、風疹の予防接種をしたのかしてないのか、主人はしたのかしてないのかみたいなことになって……。お互いに実家に電話して、母子手帳を見てもらったりして。

もちろん母子手帳は母子手帳で、ページをめくって「懐かしいな」という良さはあるのですが、データの記録としては時代にマッチしていないですよね。それはやはり国全体として考えていってもらいたい部分もあります。

藤田 そうですね。ほかにも当社の仕組みであれば、薬局で処方されたお薬のデータも入れられるので、電子データで管理できます。最近は配偶者や扶養家族も全部、IDをひとりずつに付与しているので、個人個人のデータとして見れるようになっています。マイナンバーカードも合致してきたので、非常にいいタイミングでデータ化が進んでいるところです。

▲新保アナも自身の経験から、母子手帳のデータ化の必要性を考えるようになったという