リアル書店には書店員さんがいます。そして電子書店にも“顔が見えない”書店員さんがいます。なかなか実態が見えない電子書店の“中の人”にアレコレ聞いてみようと思います。

今回は1927年の創業以来、国内・海外に数多くの店舗を展開してきた紀伊國屋書店が、2011年に運営を開始した電子書店「Kinoppy」の販売チームに勤める中川さんと門田さんにインタビューしました。

▲電子書店 Kinoppy

順風満帆とはいかなかったスタート

――本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介からお願いします。

Kinoppy門田さん(以下、Kino門田) Eコマース事業部の電子書籍事業課で、課長代理をしております門田と申します。電子書店を弊社のなかで立ち上げようという話が出たときから担当していて、丸々10年以上この仕事をしています。

▲Kinoppy 門田さん

Kinoppy中川さん(以下、Kino中川) 中川と申します。電子書籍事業課の販促チーム、一応リーダーということになっていますが、門田がバリバリやっていますので、私はどちらかというと見ているだけです(笑)。紀伊國屋書店に入社してから30年くらいになるのですけど、電子書籍事業課に配属されたのは5~6年前なので、そういう意味では門田の後輩ということになりますね(笑)。

▲Kinoppy 中川さん

――紀伊國屋書店といえば老舗の本屋として有名ですが、電子書店「Kinoppy」の特徴などはありますでしょうか?

Kino門田 「Kinoppy」は2011年に運営を開始しまして、今年の6月に10周年を迎えます。ネット通販(ウェブストア)との連動により、ストアでは電子の本とともに、紙の本を購入することもできるハイブリッド展開をしていたり、ビューワの使いやすさにも定評があります。

――紙・電子どちらも扱っているのは大きな特徴だと思いますが、それ以外にも他書店との違いなどありますか?

Kino門田  電子書籍の販促チームには、店頭に立った経験のある社員も多数在籍しているので、リアル書店で本を選ぶときのワクワク感と、電子書店ならではの豊富な品揃え、いつでもどこでも気軽に購入できる利便性を兼ね備えた、紀伊國屋書店が運営するからこその「いいとこどり」なサービス提供を目指して日々運営しています。

――老舗書店である紀伊國屋さんが、電子書店をスタートする当時はどのような感じだったのでしょうか?

Kino門田 そうですね。当時、弊社会長の高井が「読者が最も望む形で本をお届けし、また書店として時代に沿って進化してゆくためにも、これからの紀伊國屋書店には電子書籍が必要である」と判断して立ち上げに至ったんですが、当初は「電子書籍が売れると紙の書籍が売れなくなるのでは」という懸念が世間的にあり、社内でもそう考える人はゼロではありませんでした。

まずはそのあたりの認識のすり合わせから……という状況ではあったのですが、地道に電子書籍を認知してもらえるよう活動を続け、今ではどのように実店舗や外商部門と連携すれば効果的な販促につながるか、というポジティブな掛け合わせを考えられるところまできたかなと思っています。

――ウェブストアや電子書籍アプリ「Kinoppy」は、店舗と同じポイント制度にされていますよね?

Kino門田 はい。リアル店舗とウェブストアでのポイントを共通にしていまして、どこで買って付いたポイントでも、どちらでも使えるという、わかりやすいメリットもありますし、紙では今どういう本が売れているか、次にどういう本が売れそうか、という売れ筋なんかも社内で共有していますので、それを電子側でも展開したりと情報交換しながらできるのも、リアル店舗があってこそかなって考えています。

――ポイントを共有できるのは、すごくいいですね。そんなKinoppyさんが、じつは思っているウチの書店の直してほしいところなどあったりしますか?

Kino門田 中の人の人数が……足りない!!! ですね(笑)。時間ができたら、アレやりたいコレもやってみたいと考えていますが、実際は日々の運営に全力投球する毎日で、皆さんが思っている以上に超アナログな仕事をしています。

――ちなみに、おふたりはジャンルも担当されているんでしょうか?

Kino中川 私はリアル店舗でいうところの新刊台、電子書籍のストアで言えばトップのページを担当しております。細かいジャンルでは、サイエンス・コンピューター・スポーツ、それから地図ガイドを担当しています。

Kino門田 私もかなりいろいろやっていて、新書・教養書・趣味実用書・医薬看護系とグラビア写真集も担当しています。

――ものすごく広いジャンルをそれぞれ担当されていますね!

Kino門田 そうですね、堅いところから柔らかいとこまで、人手不足というのもあるんですけど(笑)。