手術、抗がん剤治療、放射線療法は、三大がん治療と呼ばれています。一方、私たちのからだにそなわっている免疫の力を活かしてがんを治療する方法を「免疫療法」といいます。免疫療法は、三大がん治療に続く「がんの第四の治療法」ともいわれます。

「免疫療法」は未だ発展途上で完成にはほど遠い治療法ですが、今後のがん治療の主流になっていくと見込まれているそう。標準治療に(手術・抗がん剤・放射線)、光がん免疫療法、自家がんワクチン療法、水素ガス吸入療法、温熱療法などの代替医療を併用することで、「もう何もできません」と宣告された多くのがん患者の治療に効果を上げている医師の萬憲彰氏が、「がんの第四の治療法」について解説します。

※本記事は、萬憲彰:​著『希望のがん治療』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

「第四の治療法」免疫療法とは何か

これまでのがんの標準治療には、「免疫を活用する」という観点はほとんどなく、免疫療法の多くは標準治療"外"でした。

なぜ、「第四の治療法」とされながらも公的医療保険の適用にならないのか、不思議に思う方もいるかもしれません。免疫療法が保険適用にならない、その背景にはさまざまな事情が絡み合っていますが、最大の理由は、免疫療法の効果を証明するのが難しいからでしょう。

がんの免疫療法自体は1970年代から行われており、臨床的に効果があったと報告されているものも少なくありません。しかしながら、免疫療法は患者さんによって効果の差が大きいのも事実。がんの種類、ステージが同じ患者さんに同じ免疫療法を行ったのに、常識をはるかに超えて効くときもあれば、効果がほとんど確認できないときもあります。

加えて、免疫療法はからだにもともとそなわっている機能を活用しているため、患者さんが回復したとしても、免疫療法のおかげで回復したのか、それとも、免疫機能が偶然うまく働いた影響で回復したのかを、はっきりさせることは困難です。このような理由から、多くの免疫療法は、高いレベルでのエビデンスを得られずにいます。

ちなみに、個人によって免疫療法の効果に大きく差が出るのは、免疫そのものの個人差が大きいからではないでしょうか。

新型コロナウイルスに感染した方の症状も、人によってかなり差がありました。感染しても無症状な方もいれば、若くて基礎疾患などもないのに重症化した方もいます。同じように、免疫療法は免疫機能に働きかける治療法だけに、効果にばらつきが出てしまうのでしょう。

免疫療法は完ぺきな治療法ではなく、いまだ発展途上の治療法です。しかし、急速に進歩しています。近年は、光がん免疫療法、免疫チェックポイント阻害療法のように、一部のがんで標準治療となった免疫療法もあります。免疫療法は、今後のがん治療のメインストリームになっていくだろうと私は考えています。

また、免疫療法は、副作用の軽減や再発・転移の予防も期待できます。したがって、三大がん治療との併用もおすすめです。たとえば、抗がん剤治療を続けていると免疫力が落ちます。そこで、免疫療法で免疫力をカバーできれば、抗がん剤を使用できる期間が長くなり、がんそのものを小さくできるかもしれません。

▲免疫療法の活用でがん治療が進歩する イメージ:よこてさとめ / PIXTA