いじらしくて可愛いマッチョなタイ人男性

――それだけマッチョが多いということは、恋愛の面においても「黙って俺について来い!」的な男性が多いということでしょうか?

清水 そうとも言えないのが面白いところです(笑)。タイ人は「恋愛至上主義」の人が多いのですが、体がマッチョなタイ人男性でも、恋愛となると小さなことで嫉妬をしたり、すぐに落ち込んだりと、非マッチョでロマンティックな言動が多いのが特徴です。ちょっと意地悪な言い方とすると、思い通りにいかないとすぐに落ち込んで“すねて”しまう「こじらせ系男子」が多いのも事実。それが可愛いと思える人であれば、きっと彼らとの恋愛を楽しめる素質があると言えるのではないでしょうか。

『2gether』でも、サラワットの初恋相手であるパムが現れたときのタインの言動が、まさにそれですね。サラワットはタインのことが好きだと言っているのに、一方的に推測して嫉妬して「もしかしたら、パムのためにサラワットは曲作りをしているんじゃないか」と勝手に思い込む、という負の思考ループにハマってましたよね。

そして、まるで当てつけのように、落ち込んでいるタイミングで優しくしてくれたミル先輩の車に乗って帰ってしまう……。結局はタインの勘違いで、サラワットは「君を愛せない、曲はタインのためにしか書けない」とパムにはっきりと伝えていて、もとさやのラブラブモードに戻って一安心、という展開がありました。これが、まさに「こじらせ系」の典型と言えるような気がします。

タイのドラマでは、男女問わず恋愛系のストーリーでは同じような展開になることが多いのですが、この勘違いからの相手への当てつけのような行動、つまり「相手につらい気持ちをわかってほしい!」というアピールは、まさにタイドラマ、いやタイ人の恋愛の王道! ちょっと言いすぎかもしれませんが(笑)、タイ人のいじらしさが出ているような気がします。

――クールなサラワットが披露する楽曲も、そういった いじらしくて可愛い曲なんでしょうか?

清水 そうですね。サラワットが、バンドコンテストのステージで最後に披露した楽曲『Love Tine』の歌詞も、ある意味でタイ人男性の恋愛に対する非マッチョな可愛らしく、時に弱気な言葉がちりばめられています。

たとえば「君が誰にでも優しいってさ……普通のことなの?」と嫉妬してみたり「僕のことを疎ましく思っているよね?」と自分の自信の無さを伝えてみたり「愛し合っていたって思いたかったんだけど、やっぱり僕の独りよがりだったの?」と、相手に“違うよ”と言ってもらいたい気持ちから、こういう聞き方をしたりと、歌詞からもタイ人男性の恋愛に対する姿勢が見えてくるのではないでしょうか。

「勘違いしているんだったら、ゴメン」というような、日本人の感覚からすると若干の女々しさを感じるフレーズも、サラワットが歌っていたら「ゴメンなんて言わなくていいから」と、心の中で返事をした視聴者も多いんじゃないかと思います。

ツンデレオーラを出していたサラワットが、こんな切ない思いをタインに持っていたんだ、というギャップもあり、見ている私たちの胸にキュンキュンくるものがありましたよね。タイミング的にも、初恋相手であるパムとの関係を疑っていたタインの胸には、まっすぐにサラワットの思いが届くような歌詞でした。

▲『2gether』第5話より ©ジッティレイン/奥嶋ひろまさ

実際にシチュエーションは違えど、タイ人男性と恋愛をしていると、このような歌詞の内容に近いことを相手から伝えられることが多いと私は感じています。自分を含め、20年以上、周りのタイ人や日本人を含む外国人が、タイ人の男性と付き合って「こういうことを彼に言われた」という話を聞いてきましたが、この『Love Tine』の歌詞内容に非常に近いものばかりでした。

そいういう意味では、この歌詞にはタイ人男性の恋愛観や、弱気になったときのタイ人男性が相手に伝えたいと思っていることが、ギュっと詰め込まれていると言えるかもしれません。