娘が「この歌は本当に合ってるよ!」と言ってくれた
――今回の新曲ですが、ご家族はどんな感想を?
みずき 夫(伝説の元プロレスラー・小橋建太氏)も娘も『満月の花』は気に入っていて「いい曲だね!」と言って応援してくれました。娘はレコーディングする前から曲を覚えて家で歌ってましたね。「ママにこの歌は本当に合ってるよ!」って言ってくれたのがうれしかったです。
――カップリングの『七化けブギ』は、また曲調が違ってて、明るく軽やかにスウィングしてますね。
みずき この歌は『雲霧仁左衛門』(くもきりにざえもん)という池波正太郎さんの作品を基にしたもので、何回かドラマ化されてるんですが、最近だと中井貴一さんが主演で放映されてましたね。その『雲霧仁左衛門』に出てくる「お千代」という女性が、変幻自在に化けるんですが、歌の中では「お千」として書いていただきました。そして私、ブギ歌うの、今回が初めてでした。
――やっぱり演歌とは気を遣うところが違うんでしょうか?
みずき そうですね。初めての挑戦でしたけど、演歌とは違った楽しみがありますね。ノリというか「音を楽しむ」っていうのは、こういうことなんだって思いました。歌詞も「七化け」にちなんで、一から七までの数字が詞の中に盛り込まれてるんです。「ひとめ」が「一」、「二度三度」が「二、三」、「ろくでなし」が「六」といった感じで、言葉遊びがおもしろい。『満月の花』もそうでしたが、楽曲ができていく過程でみんなの思いが合わさって、それによって曲がどんどん変化していく様が面白いんですよね。
――演歌を歌う難しさ、面白さというのはどんなところにありますか?
みずき どんな曲を歌うにも「演じる」要素はあると思うんですが、演歌の場合はそれが強いというか、独特の世界観があると思います。あと、演歌ならではの「色」みたいなものがありますね。音楽に込められたエネルギーも独特だなっていうことは感じますね。
命の危機に直面しても歌に対する思いは変わらなかった
――みずきさんにとって、歌を追求してきたこの30年というのはどんな歳月でしたか?
みずき そうですね。デビュー時は「細江真由子」でまだ10代。高校に通いながらお仕事をする日々でした。子どもの頃から演歌が好きで、自分の中では演歌や歌謡曲でデビューすると思っていたんですが、ちょっと違う形でのデビューとなったので。
――最初はアイドルでしたね。
みずき はい。それで2004年に「みずき舞」に改名して(現在所属する)テイチクレコードに移籍しました。それから年齢とともにいろんな楽曲との出会いがあったので、ひとくちに30年と言っても、本当に一作品一作品に真剣に向き合って、いろんな経験もさせてもらいながら迎えたので、何よりも感謝の思いというのが強くて。応援していただくファンの方々、スタッフの方々の力がなければ、やって来られなかったと思います。関わってくださった皆さんには、ありがとうという気持ちでいっぱいです。
――では、30年の活動で最もうれしかった瞬間を挙げるとすればいつでしょう?
みずき 難しいですねぇ……というのも、ステージで「舞ちゃん!」って声をかけてもらえる、その瞬間瞬間が本当にうれしくて……その連続の30年なんですね。だから「10周年のとき」とか「このステージ」というふうに「瞬間」だけを切り取るということができないんです。本当に瞬間瞬間の積み重ねで、ここまで来たという感じですね。
――結婚や出産という出来事もありましたね。一人の人間として、女性としての生活と歌い手としての生活は、うまく両立できていますか?
みずき 一人の人間として生きることと、歌手として歌わせていただくこと、私にとってはどちらもすごく大切なことです。たとえば、出産するときって子どものことに集中しますから、その時はそこに一生懸命。出産のときはすごく大変で、命に関わるような経験をしましたし、主人も病気(腎臓がん)をしたりして、その都度その都度、目の前のことに一生懸命に向き合ってきました。でも、歌に対する思いが変わるということはありませんでしたし、一人の女性として経験してきたことが、やっと30年経った今、自分の中で消化できたというか、ようやくバランスが取れるようになったかなと思います。