日本人と外国人の架け橋になろうと会社を設立

実に細やかな気配りの人である。「見た目は外国人、中身は関西人」という触れ込みだが「国籍はロシア、でもほとんど日本人」といった印象。昨年末には国内外の外国人タレントを中心としたマネジメントやキャスティングなどを行う会社「Almost Japanese」を立ち上げた。起業のきっかけも自分のためだけでなく、人のため、そして日本のため。

「スカウトされた事務所は外国人ばかりだったんですが、そこが別の事務所に吸収されたんです。すると、それまで通りというわけにはいかなくて。せっかくさまざまな国のモデルやタレントたちがいて、そのコネクションだったり、誰のビザがいつ切れるとか、どれくらい日本語が話せるのかというファイルもあったのに、それを活かしきれていなかった。だったら、一度外に出てやってみたらどうかなと考えました。

30歳になる前に挑戦してみたかったこともありました。タイミングとしては良くないのかもしれません。コロナでグローバリズムが終わる、というようなことを言っている人もいますが、自分はそうは思いません。たぶん少しずつ、また戻っていくと思っています。外国の人がたくさんやってきたとき、日本人のために、外国人のために、自分たちができることがたくさんあると思ったんです」

コロナで外国人タレントたちが続々と帰国するなか、大きな決断だった。いずれは外国人に不動産を紹介する仲介をするなど、ビジネスとして開拓していきたいと意欲的だ。

「これから外国人を受け入れるようになって、日本が欧米の国々のように『外国人を追い出せ』みたいな空気になったら、すごく嫌だなって思ったんですよね。外国人がいっぱい流入することで日本のマナーや伝統が壊れていくと、日本の人は傷ついて、外国人に対してネガティブな印象を持つ人が増えるかもしれない。今だって感じつつあるんですよ。昔よりもちょっと風当たりが強い。

たとえば、絶対にやってはいけないことですが、街で外国人がポイ捨てをするのと、日本人がポイ捨てをするのとでは見え方がだいぶ違うと思うんです。そういうのがどんどん積み重なってしまうのではないか。いつも思っているのは、“日本人は説明をしない”と感じていて『日本のこういうとこが変だ』って外国人に言われても、日本人はハハハと笑って済ませてしまう。だから外国の人は『やっぱり日本って変だな』で終わっちゃう。

でも、ちゃんと説明して、外国人も納得をして“なるほど”と理解すれば、日本の伝統が守られる。ということは外国人への非難も減る。将来、多くの外国人を受け入れるにあたり、その緩衝材になる人が必ず必要になってくると思います。日本人に対して自分が何か説明をすると、日本を理解した外国人の意見としてすんなり受け入れてくれる。

見た目はこうだけど、中身は日本人の気持ちがわかるから、どういう風に言えばいいか、なんとなくわかっているから。YouTubeでも、日本について、あれやこれや言ったりすることがあるんだけど、意外と批判はないんです。それはどういう言い方をしたら、失礼にならないか、日本の伝統文化を考えながらやっているからです。

外国人に対しても、この容姿のおかげで、日本に住む先輩外国人みたいに仲間として見られる。日本人が『これは日本の文化だから守れ!』っていうより、自分が『こういう理由があるからこうなんだよ』と言った方が、伝わりやすいし受け入れられやすい、それを体感として持ってるから、その中間になるようなものをビジネスにできたらという発想です」

▲今後、日本が外国人を受け入れる際の緩衝材になりたいと考えている

聞けば聞くほど、的を射ていて、もしかして面倒くさくなんてないのでは? と思ってしまう。ただ「その意見、その通り」と相手が思ってしまうのは、彼にとっては本意ではないらしい。なるほどどうして、やっぱり「面倒くさいロシア人」なのだった。

「僕が普段、言っていることは正論とはちょっと違います。ブラスを見て『ああはなるまい』と思っている人もいると思うけど、自分はそのほうが言葉を出しやすいです。ブラスが思っていることは正しいから『私もその意見に賛同する』って発信してもらうより『あれはちょっとヤバい外国人が言ってるだけだから』って軽く流されていた方が気が楽。それに僕の意見は徐々に変わっていっています。

昔言っていたことと、今話してることでだいぶ違うこともあるかと思います。それはそれでいいかなって。人って成長するんだから、それは成長の証。だから、恥じてないです。そんなことを言い始めたら、コメンテーターなんて大変な目に遭うじゃないですか(笑)。


プロフィール
 
小原 ブラス(こばら・ぶらす)
1992年4月20日生まれ。ロシア・ハバロフスク出身。6歳から兵庫県に移住。コメンテーターとしてTOKYO MX『5時に夢中!』(水曜日黒船特派員)、フジテレビ『アウト×デラックス』(アウト軍団)、『めざまし8』にレギュラー出演するほか、連載コラムも多数。日本の政治や時事ネタに物申す、関西系ロシア人YouTuber“ピロシキーズ”としても活動中。株式会社Almost Japanese代表を務める。