タリバンとアルカイダの同盟関係
タリバンは、パシュトゥーン人の住むアフガニスタン南部では簡単に勝利を収めたが、少数民族の住む北部の戦闘では苦戦した。苦しい局面でタリバンを助けたのは、アルカーイダ(アルカイダ)だった。
アルカーイダを構成したのは、1980年代にソ連との戦闘に参加し若者たちだった。主としてアラブ諸国出身のイスラム急進派の組織である。指導者はオサマ・ビンラーディンだった。アルカーイダの部隊が北部での戦闘では、突撃部隊として突破口を開いてタリバンを助けた。
戦闘を通じて、タリバンとアルカーイダの血染の同盟関係が成立した。しかも、両者の指導層の子息が婚姻を通じて血縁関係を結んだ。そのアルカーイダが、2001年9月11日にアメリカで同時多発テロを引き起こした。
アメリカは、タリバンにビンラーディンなどの引き渡しを求めた。客人を保護するというパシュトゥーン人の伝統から見ても、またタリバンとアルカーイダの血縁と同盟関係から判断しても、タリバンには要求の受け入れは困難だった。アメリカの要求をタリバンが拒絶すると、アメリカは軍事力でタリバン政権を打倒した。
イラク戦争がタリバン再起の契機となる
2001年10月にアメリカ軍は攻撃を始め、同年末までにタリバン政権を崩壊させた。またアルカーイダに大きな損害を与えた。そしてアフガニスタンでは、アメリカなどの支援を受けた新たな政権が樹立された。これが、この8月に崩壊したアフガニスタン政府である。
タリバンもアルカーイダも大きな打撃を受けたが、滅亡したわけではなかった。指導部はパキスタンに逃れ、同国軍部の保護を受けた。そして再起の機会を待っていた。
その機会は2年後にやってきた。2003年にアメリカがイラクのフセイン政権との戦争を始めたため、その軍事力の主力をイラクに移してしまったからだ。
その隙にタリバンは、南部の国境地帯を中心に徐々に影響力を復活させた。アフガニスタン政府の腐敗や不人気がタリバンの復活を助けた。アフガニスタン政府軍とタリバンの内戦が始まり、出口の見えない戦いが続いた。
2017年、アメリカ第一主義を掲げたトランプが大統領に就任した頃には、アメリカ国民はアフガニスタンでの長い戦争を耐えられない程の負担に感じ始めていた。トランプはタリバンとの交渉でアメリカ軍の撤退を約束した。
そして2021年トランプの次に大統領となったバイデンは、その路線を引き継いだ。そしてアメリカ同時多発テロの20周年の今年、9月11日までにアメリカ軍の全面撤退を発表した。
それに呼応するかのように、8月に入ってタリバンが軍事攻勢を開始。アフガニスタン政府軍は大した抵抗も見せずに総崩れとなり政府が崩壊したのだ。