神様仏様を拝む人に悪い人はいない

今回の事件で、被害が大きく広がったのには、金島雪子が真言宗系の新興宗教​団体の霊能者という立場であることも影響している。

その宗教団体は、全国に約80万人もの信者がいると言われている。そのなかには、霊能者という立場についている人たちが1,000人程度いて、修行を積むと同時に勧誘活動の結果によって、その地位につけるとされている。ざっくりいえば「その宗教団体のなかで位の高い人」ということになる。

夫を早くに亡くしたE子さんは、霊能者だという金島雪子に一目置いた。そして「一緒に拝みに行きましょう。先祖の供養になりますよ」と誘われたことから、親密な付き合いが始まるようになったのだ。

「拝みに行く日は、ご主人が車を出してくれ、お寺まで雪子さんと一緒に送ってくれました。雪子さんは、とても穏やかな雰囲気の優しい話し方をする人で、私は『いい方と知り合った』と思いました」

これまでの苦労や寂しさに寄り添ってくれた金島雪子を、E子さんはまるで菩薩のように感じ、慕うようになっていったという。

「私は、早くに夫を亡くしたので、お寺や神社に誘われると断らないんです。どんな宗教であっても、一緒に拝みに行くようにしているんです。神様や仏様に拝む人に、悪い人はいないと思っているので……。それに、金島さんのご主人も上等な背広を着て、500万円もするという腕時計をつけていて、立派な方のように見えました」

幼なじみは1,000万円を預けたという。そして、目の前にいる金島雪子は徳の高い人物であると聞いている。金島の夫は、事業で成功している立派な人のようだ……。そんなことから、E子さんは金島夫妻を信頼できる人物だとすっかり判断してしまったのだ。

「それでも、投資と言われていたら絶対に預けませんでした。これまで投資には手を出したことはありません。怖いものだと思ってきましたから。『私(金島)に預けてください』『大丈夫だから。銀行に預けておくよりずっといい』と言われ、銀行に預金するのと同じだということで600万円を預けたんです」

▲銀行に預けるのと同じ感覚で預金を託してしまった イメージ : PIXTA