徐々に増えつつある高齢者を狙う悪徳商法

「投資だとわかっていたら決して話には乗らなかった、いわばお金の知識を持たない方たちが、元本が保証されるから預けて欲しいということで、銀行と同じ感覚でお金を渡してしまっている。しかも、難しい言葉を敢えて使って、理解できないように説明しているんですよね。結果、よくわからないけど、信用している人たちだからと、お金を預けてしまっている。信用を利用してお金を奪う手口は非常に悪質です。ましては、奪われたのは、これまでご両人が地道に働きコツコツと貯めてきたお金ですよ」

E子さんとS子さんの事件を担当する、詐欺事件に詳しい加藤博太郎弁護士は憤る。

 4人に対する損害賠償請求の民事訴訟は、金島忠男・金島雪子と江渡賢慈(オフィスケイ)、石島克浩が分割して進んでいる。

また、加藤弁護士の「高齢者なので早めに進めてほしい」という依頼により、裁判は非常にスピーディに進んでおり、2回の弁論のあと、9月2日に江渡賢慈(オフィスケイ)と石島克浩への判決が出た。口頭弁論は被告が全て欠席のうえ、一部では非を認めていることもあり、E子さんもS子さんの全面勝訴となった。

そして、10月4日から金島忠男・金島雪子の口頭弁論が始まる。

▲被害に遭っても周囲に相談できずにいる人が多い 出典:警視庁生活安全局生活経済対策管理官の資料より

現在、警察では特殊詐欺に対する啓蒙活動をしぶとく行っている。成果は出ており被害額も、認知件数も年々減少している。だが、その被害者は9割近くが高齢者で、被害額は285.2億円(令和2年)と驚くほどの金額が、闇に流れているのが現状だ。

ちなみに、E子さんとS子さんが遭遇した件は、悪徳商法のひとつである利殖勧誘事犯として、加害者の顔が見えない特殊詐欺とは別に扱われる。検挙件数としてはここ10年では横ばいだが、相談件数が徐々に増えている。

すでに後期高齢者となっているE子さんとS子さんが失ったものは、お金だけではない。長きに渡って築き上げてきた地元での安心の暮らし、信頼して付き合える身近な友人、そして心身の健康……。いろいろなものを失った。

このような被害を防ぐには、一体どうしたらよかったのだろう。

S子さんは自ら打ち明けるまで、ご主人も把握していなかった。もちろん子どもには知らせていない。E子さんに至っては、今でも子どもたちには被害を秘密にしており、ひとりで抱え込んでいる。

自分の親が仲良く付き合っている友人が、もしかしたらタチの悪い人なのではないか? ――そう疑念を抱いたとしても、子どもは正面を切って指摘できないかもしれないが……。

▲裁判に挑むE子さんとS子さん