飲食店はもとより、人間の欲望を満たすあらゆる遊興施設が集中する新宿・歌舞伎町。「眠らない街」とも言われ、見光目的などで海外の方にも人気ですが、いま“ある意外な理由”から歌舞伎町にとんでもなく詳しくなっている外国人が続出しているようです。元国連職員で海外事情に明るい谷本真由美氏にお話を聞きました。
※本記事は、谷本真由美:著『世界のニュースを日本人は何も知らない3』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
海外で流行っている驚きの日本映画
欧米の動画配信サイトを見ていると、日本映画といっても日本人にはあまり馴染みのないものが大きな人気を博しています。
最近、日本では見る人の少ないヤクザ系映画が、欧米では人気ジャンルのひとつとして確立。もはや、欧米において日本映画といえば、なんといってもまずは「ヤクザもの」なのです。
次に人気なのが『リング』などに代表されるホラー系。エクストリームなコンテンツを見たければ、いろんなものを見ようというのが定番になっています。最近の日本で人気の「チョイなごみ系」の映画は、海外でまったく人気がありません。
それだけでなく先進国のヤクザ映画ファンは、最近のものでは飽きたらず(20年くらい前の北野武監督が製作したものは「最近の作品」と捉えています。その北野映画の源流は一体どこにあるかを追求し)、なんと1960年代の宍戸錠や小林旭の作品を熱心に見ているのです。なぜか英語圏の動画配信サイトでは、日本ではまったく見当たらない渡哲也や宍戸錠が主演する、かなりマニアックな作品が配信されていてけっこうな人気です。
若い人もなぜか『仁義なき戦い』シリーズを見ています。彼らにとっては菅原文太や梅宮辰夫のほうが、最近の日本の俳優よりもメジャーかもしれません。
また日本のエクストリームなコンテンツに興味のある人々が、新宿の歌舞伎町にやたらと詳しいことに驚きます。その理由は、やはりヤクザの本拠地が歌舞伎町であるという前提に加え、ゲームの影響が大きいようです。
人気ゲーム『龍が如く』は英語圏で『YAKUZA』
先進国では、セガが発売している『龍が如く』が人気で、英語圏ではズバリ『YAKUZA』という名前で発売されています。
彼らはこのゲームを通してヤクザ組織の形態や、この業界でメジャーなビジネスなどを学び、歌舞伎町の地理に詳しくなっています。こういうゲームをプレイした人々が、もうちょっと知識を深めようとして日本のヤクザ映画に手を出すのは論理的です。
外からみた日本人のイメージは、日本人が想像するのと少し異なります。超健康志向で禅を愛好し、エクストリームなコンテンツを生み出すうえに、すごくクールなギャングスターがメチャクチャおもしろいゲームを創っている感じなのです。
これはアメリカといえばロックンローラー、イタリアといえばマフィアを想像していた、一昔前の日本人に近いものがあります。
実際に日本人に会ってみると、その大半の人々は『龍が如く』に出てくる兄貴たちとか『アウトレイジ』の西田敏行とも相当異なり、かなりユルユルでなんとなんとなく頼りなく、しかも異様に礼儀正しくて律儀な人々なので、逆に萌える人々が多いのです。