トヨタ(日本)とVW(ドイツ)の仁義なき戦い

加藤 やはり、フォルクスワーゲン(VW)とトヨタは、これまでずっと世界のトップシェアを争ってきたわけですよね。ドイツが潰したいと思っているのは日本であって、トヨタを潰せば日本が潰れる、そんな意識で仕掛けてきているんでしょうか?

岡崎 そうですね。VWのCEOであるヘルベルト・ディースさんが「電気が勝った!」と騒いでいたのは「ハイブリッドじゃなくてEVが勝つんだ」という意思の現れですよね。「水素も駄目、電気が勝つんだ」と。要するに「なんとしてもトヨタを潰したい」「トヨタに負けたくない」という心の叫びです。

▲ドイツと中国の関係は? イメージ:鈴 / PIXTA

加藤 一方でドイツは中国と組んでいるじゃないですか?

岡崎 組んでいますね。

池田 基本的にドイツって昔から中国と仲がいいんですよ。しかし、ディースさんの発言の裏を考えると、トヨタのことを歯牙にもかけていないんだったら、こんなことを言うわけがない。

加藤 では、VWとトヨタの戦いがこれから始まると……。

岡崎 そうです。

池田 VWはトヨタがかなり恐いんですよ。「放っておくとやられるから、やられる前にやれ!」と言っているわけですよ、簡単にいえば。

加藤 なるほど。トヨタもこれから全固体電池を製造するようになるわけですよね。一方、VWも実際に今、バッテリー工場をEU内に作り始めています。〔※VWはスウェーデンのノースボルト社に今後10年分に相当するバッテリーを発注〕

岡崎 そこで問題になってくるのが「バッテリーの原料はどこからくるのか?」です。それを握っているのは中国じゃないですか。

加藤 そうです。コンゴで採れるコバルトなど、世界中のレアアースは中国に握られています。

岡崎 「中国で作ったバッテリーは、LCAの基準だと“汚い”からEUには入れさせないよ」とEU側が中国に一方的に言うと、今度は中国がEUに原料を売ってくれなくなります。だから、おそらく水面下でドロドロの駆け引きをやっているはずですね。

※注1 トヨタの自動車生産実績(2020年度)
国内:約300万台/海外:約500万台。トヨタグループでは合計952万台となり 2020年度は世界販売台数1位。世界でもトップテンに入る企業価値を持つ。

※注2 LCA(Life Cycle Assessment/ライフ・サイクル・アセスメント)
製品やサービスのライフサイクル全体の環境影響評価の手法。ライフサイクル全体とは「資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費― 廃棄・リサイクル」を指す。