企業トップのドキュメンタリーが人気

個人的に推したい本も上げていただいてます。1つが『渋谷ではたらく社長の告白』ということですが。

飯泉 サイバーエージェント社長の藤田さんの本です。創業時にどのようなことが起きて、どういうふうに考えたのかを綴っているんですけども、私自身、IT企業で務めていたバックグラウンドがあるのもあって、すごく共感できるところもあったりして面白く聴いてました。

これ以外にも企業トップの方のドキュメンタリーは、audiobook.jpでは人気ですね。ドラマチックに感情移入ができるような作りになっていて、聴き入ってしまいます。

――電車やバスに乗って聴いていると乗り過ごしそうですね。スタートアップ界隈だけじゃない、一般のビジネスパーソンにも聴いてほしい内容ですか?

飯泉 そうですね。その当時のインターネット黎明期に賭けた人たちの物語っていうか、なんだか目頭が熱くなるなあと思って。やっぱり世の中、成功するってわかったうえでできることって少ないと思うんですよ、それぞれの立場で勝負をしたり、ちょっと不確実なものをやらないといけない。何かに立ち向かっている方には、すごく刺さる作品だと思いますね。

藤田社長をメディアとかで見ていると、すごく強気な姿勢に見えるんですけど、内面として弱い部分があったという告白もあるので、そこも含めて魅力的な作品だと思います。

――なるほど、勇気がもらえそうですね。もう1つ上げていただいているのが『人生ドラクエ化マニュアル』ですね。

飯泉 はい。人生をドラクエ化する(RPGゲームのように目的・ルール・敵を設定する)ことで、人生をゲームとして楽しむことができる、といった生き方を説いた本なんですけど、ドラクエという幼少期から親しんできたゲームを用いて説明されるので、非常にわかりやすいです。

これはオーディオブックならではの工夫なんですけど、ゲームの効果音をつけているので、ワクワクした気分を感じながら聴いてもらえると思います。

――楽しそうですね! ちなみに聴いてほしい年代というか対象はありますか?

飯泉 10代、20代の漠然と何をやろうかと考えている人、挑戦したいことにまだ踏み出せていない若い人にぜひ聴いてほしいですね。自分も冒険を始めようと前向きな気持ちになれるんじゃないかと思います。

「聴く」を普通の手段として選択する

――では次に、これから取り組んでいきたいことを教えてください。

飯泉 audiobook.jpが目指すのは「聴ける」を当たり前の世の中にすることです。まだまだ聴くことによって、何か新しい情報や価値観、新しい世界に出会える経験って少ないんじゃないかと思うんですね。だから、それが普通の手段として選択されて、日常的に聞くことでいろんな出会いがあるといいなと思ってます。そのためには、もっともっと多様な音声コンテンツがあるべきかなと。

――どこのジャンルを強化したいとかありますか?

飯泉 そうですね。例えば、タイムリー性が強いニュースは、人が読んで制作する関係上、読み上げてから配信となるんですが、そうなると情報鮮度が落ちてしまうんですよね。それを合成音声で読めるようにすれば、タイムリーにニュースを音声で聴けるようになって、音声コンテンツの幅の広げ方の1つとなるかと思っています。

あとは、文学作品だったり、ビジネス書を多く制作しているのですが、それ以外のジャンルにもチャレンジしていけたらいいなと思っています。

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飯泉 それから、現在はアプリでダウンロードして聴く手段しかないんですが、コンテンツへのアクセスを容易にしていきたい、シームレスに聴く体験を作っていけたらいいなと思っています。コンテンツを作っても、聴きやすい環境や、手に届きやすい環境がないと聴いてもらえないので、そこにも力を入れていきたいなと思っています。

取り組みとしては2つありまして、1つは弊社が制作したオーディオブックを、audiobook.jp以外のプラットフォームでも聴けるようにしています。例えば、Apple・Google・ドワンゴのストアでも配信する、そのような第三者配信を増やしていって、オーディオブックというコンテンツ自体へのアクセスが容易になるように取り組んでいます。

2つめは、audiobook.jp自体のサービスをさらに磨いて、あらゆる人にとって使いやすくしていきたいと思っています。最近だと、オーディオブックを使う理由の1つに、忙しくて本を読めないから“ながら聴き”をしている、という以外にも、目が疲れやすくなってきたので、本を視覚で読むよりも聴いて理解する習慣に変えたい、といった方も多くなってきてます。

ですので、目が疲れやすい方でも使いやすいように“目に優しいモード”だったり、ヘビーユーザーの方のご要望に応えて“付箋をはさめる”ようにしたりとか、そういう改善をしています。

――その付箋というのは、ここがポイントだなと思ったところで押せば、そこにいつでも飛んでいけるっていう機能ですか?

飯泉 そうです。

――いいですね。ユーザーとしても意見を出した甲斐がありますね。

飯泉 まだまだ小さいサービスなので、愛してくださる方たちと一緒に成長していけたらいいなと思ってます。

――ポイント払いや携帯払いにも対応されてるから、若年層の方も入りやすいですね。

飯泉 そうですね。特に若年層は、動画やショッピングなど、デジタルコンテンツ内での時間の奪い合いが激しいと言われがちです。確かにスマートフォンなどの画面を見ないといけないものに関してはそうなんですけど、弊社のサービスや音声プロダクトは、スマートフォンなどに触れない時間にも使えるので、そこで日々のお供になれる存在になるといいなと思ってます。

――目は使いすぎると疲れるんですけど、耳が疲れた覚えはないですね。それでは、最後にオーディオブックの今後について聞かせてください。

飯泉 今はまだ市場としては小さいんですけれど、昨今の音声ブームもあって注目されているタイミングだと思っていますので、オーディオブックの魅力だったり、使い方をうまく伝えていって、多くの人の生活のなかで、時間を豊かにすることができるように、コンテンツ作りとプロダクト作りの両輪に注力してやっていきたいなと思っています。

――ありがとうございました!