水深500m。簡単にのぞくことができない世界を妄想
釣りの師匠が深海釣りのマニアで、私が釣りを始めた頃から面白さをよく聞かされていました。それに影響されて、いつか行きたいと思っていたのですが、釣りを始めたばかりのぽっと出が、すぐに手を出せる釣りではなく、もう少し水深の浅いところで経験を積んでからトライしようと思っていました。
そして、もうひとつ大きな理由は、リールが高くて買うにも踏ん切りがつかなかったから。道具はレンタルすることもできるけど、私は自分の道具で釣りたい派。いつか、いつか、いつかー! とは思っていました。
そんなある日、私の背中を突然押したのは、消費税が8%から10%に上がるニュース。いま買わないともっと高い値段で買わされるのか! いま買うのが一番安いんだ! と思って、そのタイミングで決意しました。
あちこちの釣具店へ電話をかけて、一番安いお店を探して。糸を1400m巻いてもらって、本体とリールを合わせて25万円。もともとは本体だけ25万円なので、糸がついた状態だとかなりお得。そしてしっかり、お店のポイント5倍デーに買いに行きました。
最初にトライしたのはキンメダイ
自慢のリールを持って最初に釣りに行ったのはキンメダイ。伊豆の稲取で大きなキンメが釣れると聞いて、ワクワクしつつも緊張しながら稲取へ。
なぜ緊張するかというと、深海釣りは船全員のチームプレイも必要で、自分の失敗が全員に迷惑をかけることになり、そのことで釣果も大きく左右されるからです。
特に、仕掛けの投入は一番緊張するところ。自宅で練習もできないので一発勝負、全集中でキメるしかないのです。この緊張感は経験をしないとわからないと思う。絶対に切れないと信じて自分で結んだヒモで、一か八かでバンジージャンプを飛んでみるような感覚かもしれません(ちょっと大げさかな!?)。
その日は潮の流れがすごく速くて、2キロの鉄筋棒のオモリの反応もわかりづらいなか、船長の合図で、順番に一人ずつ仕掛けを投入していきます。皆さんが次々に投入を成功させていき、それはうれしい一方、自分も絶対に成功させなきゃとプレッシャーに。
私が失敗させて、周りの皆さんの仕掛けを変に絡ませてしまったり、私以降の方が私のせいで投入できなくなってしまったりして、貴重な1投を台無しにしてしまうわけにはいかないのです。
深海500m~700mの釣りは、仕掛けを落とすだけで10分くらい。全長634mのスカイツリーのテッペンから糸を垂らしているイメージ。あげるのにはもっと時間がかかり、1日に海底へ落とせるのは8投程度。この日の目標は、魚を釣る云々よりも、この8投をきっちり落として、きっちり上げることに。
そして緊張の第1投目。自分で作った20本針の仕掛けは、パラパラとリズミカルに水深500mまで落ちていき、ひとまず安堵。船長が初心者でも釣りやすいかけ下がり(坂になっていて、どんどん水深が深くなっていく)のポイントでやってくれたこともあり、最初から2本ゲット! その後も順調に投入と回収を繰り返し、良型を9本釣れるという、とてもいい深海デビューになった。