自分がこの世界に放りこまれたら、を想像
――動物文明史研究会という名前は、初めて見た方でもかなりインパクトがあって、どういうコンセプトでやられているのか、よくわかると思うのですが、この表現を通じて伝えたいメッセージなどはあるのでしょうか?
白井 うーん、やはりメッセージと言うよりは、ビジュアル、アイデア双方にいえることですが、ほかにない世界を見たいな、というのが一番ですね。私はSF作品が好きで良く見るんですが、その作品の持つメッセージと同じくらい、宇宙人が出てきたときに地球の人間とは考え方が違うな、というところに着目してしまうかもしれません。
――「もしビーバーが進化して文明を持ったら?」という作品で、そもそもビーバーに着目したのはなぜですか?
白井 チームの人たちと会議をしたんですよね、“既存の人間以外の生き物が文明を持つとしたら、何が一番有力かな?”って。そこで道具を扱えるかどうかが大きいから、じゃあ類人猿が有力だよね、ってことになるんですけど、それじゃあまりにもベタ過ぎて面白くない。じゃあほかにって考えたときに、出てきたのが鳥だったんです。でも、自分の中ではその時はしっくり来なくて。
――というのは?
白井 もちろん、鳥でも考えられたと思うんですけど、自分がやりたいのは説得力のあるファンタジーだなって思ったんです。そこで、ビーバーだったらファンタジーとリアルを、うまくつなぎ合わせることができるなって思ったのが大きいと思います。まず、ビーバーは実在してる。でも、超でっかい木を家にする、っていうのは楽しいけどリアルではない。じゃあ、この2つを段階を経てつなげればうまく見せられるかな、という考え方ですね。
――なるほど、混じり合いそうにない2つでも、グラデーションをつければ説得力のある面白いものが出来上がるということですね。
白井 はい。『自動販売器で暮らす鳥』でいうと、自動販売機を動物が動かしていたらどうなるかと考えました。おそらく売り物を買う側の反応が、彼らの「法則」になるのだろうなと。「食べられないよう食べる」の法則で動いていた動物が、新しい法則を模索していくんだろうなと思いながら描きました。