母ライオンと一触即発!
―― カバが突進してきて死ぬかと思った、というピンチがあったと伺いましたが、そのほかでも危ない目に遭ったことはありますか?
太田 動物に手をかけてしまいかねない危機というのがありました。サファリカーから離れて歩いてガイドするウォーキングサファリでは、より動物との距離が縮まる一方、危険も増すことから、ライフルの資格を取る必要があります。
―― 当然、ガイド中もライフルを手元に携えていると。
太田 そうです。もしも何か危険があれば、サファリガイドはお客さんの命を守るために、その動物を撃ち殺さなくちゃいけないんです。でも、やっぱりサファリガイドは、みんな動物が大好きでこの仕事やっているので、ライフルを使うことなくキャリアを終えるっていうのが全員の目標なんですよ。また、ライフルを実際に使うことが一度もないようにするのが、サファリガイドの責任ではあります。
―― はい。
太田 ウオーキングサファリ中は、それくらいの緊張感をもっていますが、予想もしていなかった瞬間に出くわすこともあるんです。ある日のウオーキングサファリ中、茂みからいきなり、赤ちゃんライオンがパーって出てきたんです。赤ちゃんライオンが出てくるってことは親が近くにいるってことですよね? これはまずいと思った瞬間、案の定、お母さんライオンがうなりながら出てきて、私たちに向かってきて……。
―― うわー! どれくらいの距離か、覚えてますか?
太田 たぶん、10メートルはないくらいだったと思います。その時、サファリガイドは私と、先輩の男性ガイドの2人でした。サファリガイドのルールとして、先頭を歩く彼が危険を感じて「ガチャガチャ」とライフルに弾を装填したら、後ろの私もそれに従わないといけないんです。
絶対にライオンを殺したくない気持ちと、自分やお客さんの命を守らねばならない義務のあいだで心が揺れましたが、幸い装填する音に驚いたライオンは飛びのいて逃げてくれたので本当に良かったです。
―― まさに、修羅場、土壇場ですね。そんな体験もしてもやはりサバンナは魅力的なんでしょうか?
太田 私は留学がきっかけで、環境保護に携わりたいという自分の気持ちに気づくことができました。学生時代にやりたいことが見つかったのは本当に幸運だと思っていて、あとは私の性格上、迷いはありませんでした。まずは行動するという感じです。今後の目標としては環境保護活動に携わりながら、一生サバンナで生活し続けるっていうのが大きな夢です。おばあちゃんになるまでアフリカで働き続けたいと思っています。
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