とんねるずの前で芸を初披露

ショーパブ、営業、お笑いライブと同じく重要なイベント、それはテレビのオーディションだ。事務所からネタ番組のオーディションの連絡があれば、いそいそとテレビ局に行ってネタを見せる。

そこでウケればテレビ出演が決定。なんというわかりやすいシステムだろう。テレビに出れば人生が変わるかもしれない。俺のような売れない若手は、ギラギラとした態度でオーディションに臨んでいた。

どうやったら目の前のディレクターが笑うだろうか。それだけを考えて、数分のネタに人生をかける。まさに真剣勝負の場だった。あまり思い出したくもないが、芸人を始めた約20年前のオーディションのスタッフは、本当に無愛想だった。

「これは何が面白いの?」

「はいはい、お疲れさん」

あるいは、こちらを見ようともせず「はい、次」なんてスタッフもたくさんいた。

ちなみに、最近のオーディションはみんな優しい。

「面白いですね〜」

「来ていただいてありがとうございます」

今の時代はぶっきらぼうなスタッフでは芸人がついてこないのだろうし、すぐに炎上するからリスクは減らすに越したことはないが、とにかく昔は腹が立つオーディションがたくさんあった。

オーディションを受けるのは、はっきり言って苦痛だったが、時にとんでもないチャンスに出会うこともあった。俺にとっての一番の記憶は、とんねるずさんの『博士と助手〜細かすぎて伝わらないモノマネ選手権』だった。

その頃のモノマネは、五木ひろしさんや森進一さんなど、ベタなモノマネを誇張したり、メドレーで次々に披露するのが主流だったが、『細かすぎて〜』の人気により、マニアックかつニッチなモノマネが流行した。それほどの人気番組だったのだ。

有名人のなんてことない仕草をマネたり、ドラマの脇役のたわいもないセリフをマネしたり、もしくは街中にいる一般人のモノマネだったり、今となっては当たり前になっている、「そんなところを切り取るんだ」というネタ番組の走りだったと思う。

オーディションでは、当時ライブでテッパンだった織田裕二さんのモノマネを披露すると、スタッフさんが大笑いしてくれてかなりの好感触。「面白いからこれで収録しよう」と言ってくれた。テレビのモノマネ番組のオーディションにはことごとく落ちていたから、自分のネタを褒められてメチャクチャうれしかった。フジテレビからの帰り道、ビルの上にある球体がいつもよりグッと近くに感じた。

後日、マネージャーから収録日の連絡があった。夢ではなく本当に出られるようだ。その日は終日テンション爆上がりだった。だって、あの人気番組の人気コーナーに出れるのだから。