チケット代にどれだけ新しい付加価値を乗せられるか

その方向性の上に、インフラの整備があります。

基本的にうちの球場はセンターから入場するので、駅から一番近いのが料金の安い外野席。逆に、最も料金が高いネット裏が一番遠くなっています。さらに、グラウンドに一番近い席へは、階段をずっと下まで降りていかなくてはならず、かつてはトイレも売店も最上段の通路にしかありませんでした。

その上、「どこからでも観やすい」のがうちの球場の特長です。ですから当時は、これらのせいで高額席が売れないという仮説を立てました。「安い席でもよく観えるし、便利だからここでいいや」となってしまうと。

そこで2008年オフの改修では、内野席周辺を重点的にバリューアップしました。飲食店、トイレを新設。グループ席「ダグアウトテラス」も設置しました。

一番いいところですから、座席をぎっしり詰めたいところですが、そうではなくて、とにかく必ずお客さんが入っていてほしい。特別席やグループ席は、観にくい場所に設置するケースも多いのですが、できる限り選手に近いところで観てもらえるようにしました。

ホームを三塁側にしたのもこのタイミングです。これは私の提案でもありました。札幌ドームや当時の宮城球場でも三塁側がホームでしたが、まだ一般的には「ホーム=一塁側」というイメージが強かった。

内野ゴロからの一塁送球を追うテレビ映像を思い出してもらえるとわかると思いますが、中継のメインカメラは一塁側の上、右打者を撮るカメラは一塁側のダグアウト横にあります。当時、そのカメラが映し出す背景はガラガラに空いている三塁側内野席でした。そこがライオンズファンで埋まっていれば、映像の印象がガラッと変わります。

それに、グッズショップや中華料理店の入ったビルはレフト側にあることもあって、提案したのです。

グッズや飲食店も広い意味でのファンサービスであり、現在は球団にとっての大きな収益源でもあります。

今では工夫をこらした選手オリジナルグッズなどたくさんのグッズがあるのが当たり前ですが、その当時はほんの一部の選手のみ、Tシャツやキャップなどの背番号グッズがあるくらいでした。

飲食にしても、昔は野球場にありがちな「高い、まずい、単調」というイメージのままでしたが、今では「メットライフドームといえばグルメ」と言われるほど、多くの種類と美味しさを誇っています。球場でしか食べられない、季節感のある売れるメニューを飲食チームが、がんばって揃えています。この春にも、大きなフードエリアがオープンします。

▲メットライフドーム三塁側に今春オープン予定の大型フードエリア「グリーンフォレスト デリ&カフェ」の内観イメージ。野球開催日以外も営業を予定しているという ©SEIBU Lions

どの球団もファンの皆さんに喜んでもらえるように、その価値を高めてきた――それがこの15年間の変化だと思います。

さて、次回は狭い意味でのファンサービス、私がたずさわったイベントなどについて詳しく語っていきます。

『球団職員の世界』は次回3/6(金)更新予定です、お楽しみに。