活躍しているユーティリティプレイヤーの特徴

近年、ユーティリティプレイヤーの存在が重要視されている。ユーティリティプレイヤーとは野球、サッカーなどのチームスポーツで、複数のポジションをこなせる選手のことを指す場合が多い。

野球でもユーティリティプレイヤーと呼ばれる選手が近年増加している。増加しているだけではなく、守備はもちろんのこと、打撃に関しても守備位置が変わっても、パフォーマンスが落ちない選手が増えた。

ひと昔なら、コンバート(専門の守備位置を変えること)というかたちで、他のポジションの可能性を消していたが、今では完全にコンバートをせずに、状況に応じて起用している球団が増えている。高いレベルで複数のポジションを守れる選手が何人かいることにより、選手枠が決められているなかで、チームの野手運用もスムーズにいく。

具体的に選手を挙げていくと、広島東洋カープの坂倉将吾や福岡ソフトバンクホークスの栗原陵矢といった捕手一本か、完全コンバートかだけではなく、同時に内外野も守れる選手が増えている。昔であれば与えられたポジションに適性と打力を活かすため、小笠原道大や和田一浩のように捕手から完全にコンバートしていただろう。

ただ、現在のプロ野球ではユーティリティプレイヤーがいることにより、目まぐるしく変わるチーム状況にも対応ができる。

埼玉西武ライオンズの外崎修汰は、2017年に外野手として100試合以上出場していたが、2018年は二塁手・三塁手・外野手を守り、今ではほとんど二塁手として出場している。これは、もともとユーティリティ性の高い選手であり、状況に応じてどのポジションでも出場できるからだ。

東北楽天ゴールデンイーグルスの鈴木大地もそうだ。現在、中日ドラゴンズ監督の立浪和義のようなかたちで、キャリアの最初は遊撃手からはじまり、チーム状況に応じて、一塁手・二塁手・三塁手・遊撃手と内野全てを守っている。

その他、現在活躍しているソフトバンクの周東佑京や牧原大成を含めて、もともとはセンターライン(捕手、二塁手、遊撃手、中堅手)のポジションを守っていた選手が多い。

ひと昔であれば、木村拓也がユーティリティプレイヤーの代名詞だったが、もともとは捕手としてプロ野球の世界に入った。センターラインのポジションに関しては、俊敏性から肩の強さ、スローイングの正確さまで問われることから、他のポジションに横展開できるのだろう。そのためユーティリティではなく、コンバートも遊撃手から外野手のパターンが多いことも頷ける。

多くのユーティリティプレイヤーを輩出しているソフトバンク

ユーティリティプレイヤーが多い球団といえばソフトバンクだ。今シーズンは、日本一に輝いたオリックスと最終戦まで激しい優勝争いを繰り広げていた。

千賀滉大と柳田悠岐はチームの投打の柱。そこに加えて、2020年日本シリーズMVPを獲得し、東京五輪では日本代表としてプレーした栗原や、中村晃といった選手の活躍が見られた。栗原は、もともとは捕手でありながら、三塁手や外野手ができるため、松田宣浩の後釜として最有力の選手だ。中村晃に関しては、一塁手と外野手守れるため、重宝されやすい選手である。

▲2020東京五輪に出場した栗原陵矢 写真:西村尚己 / アフロスポーツ

現在では、走塁のイメージが強い周東も、 二塁手・三塁手・遊撃手・外野手を守れるユーティリティプレイヤーとして優秀な選手である。さらに、牧原もユーティリティプレイヤーとして守備はもちろんのこと、打撃でも規定打席に残り2打席だけ足りなかったが打率.301を記録した。

この2選手に関しては、今シーズンの活躍ぶりを見ても、日本代表に入れていいレベルの選手と言っていいだろう。また、ルーキーの野村勇も忘れてはいけない存在。二塁手・三塁手・遊撃手・外野手をこなしつつ、10本塁打10盗塁を記録。来年以降も楽しみな選手だ。

ソフトバンクが長期間にわたり強さを維持している理由は、ユーティリティプレイヤーが複数人いることが少なからず源となっていると見ている。