今こそユーティリティな主砲を目指すべき岡本和真
これまでの内容に合わせると、現在、巨人の主砲として活躍している岡本和真は、ブレイク当初は一塁手・三塁手・左翼手を守っており、ユーティリティ性を見出していた。
しかし、伝統がある巨人の主砲を見ると、長嶋茂雄や原辰徳といった巨人の往年のスター選手の路線は「4番・三塁手」として育っていった。その伝統を受け継ぐように、2020年のシーズンから4番・三塁手として育ったが、現在の巨人は坂本勇人の衰えや中田翔の復活などの事情により、固定するメリットが薄くなってきているのも事実だ。それに、年齢的に見てもギリギリ今の時期なら、ユーティリティプレイヤーとして戻れることだろう。
また、2018〜2019年の岡本は、各ポジションで出場した打撃成績を見ても、ポジションごとの打撃成績は特に差分がない数字を維持している。なので、三塁手を本職として守りながらも、チームの状況に応じて一塁手や外野手もこなす選手として育てていくのもいいだろう。
3つの守備位置を守りつつ来年以降さらなる飛躍をすれば、巨人としては坂本勇人以来の「新しいカタチのスター選手」を輩出できるかもしれない。
高校野球の最先端を走る大阪桐蔭もユーティリティ性を重要視
今年、主要4大会中3大会制覇を成し遂げた大阪桐蔭も、選手のユーティリティ性を以前から重要視している。春連覇と春夏連覇を飾った2018年の「最強世代」と言われていた世代は、中日の根尾昂や中川卓也(早稲田大)、山田健太(立教大)といったあたりが複数ポジションを守っており、どのポジションでも打撃のパフォーマンスを落とさずに出場していた。
根尾の場合は、投手と遊撃手のイメージが強いが、2年生の頃には外野手も守っている。中川は一塁手・三塁手・遊撃手と3つのポジションを状況に応じて守っていた。山田は二塁手・三塁手を守った。
今年の世代に関しては、メンバーを固定する傾向が強かったなかで、松尾汐恩(大阪桐蔭高)は捕手でありながら、もともと遊撃手だったこともあり、三塁手も守ったりするなどした。高校生という成長過程のなかで、勝利の確率を高めていきながら、選手の可能性を広げていく点は非常に素晴らしいことだ。
こういったように、ユーティリティプレイヤーがチームにいることで、選手起用や作戦を幅広く考えることができるのである。