全ての答えはバイトの中にある

そして私の最低レベルの感情をもう一つ。

「40までお笑いできました! もう勝ったも同然です!」

これです。40歳でまだバイトしてますけど、子どもが2人いまして、ちょっとイタいですけど素敵な奥さんもいます。

これ以上、何がいりますか? あとの人生は、馬車馬のように時間を削って働いて、家族に貢献するだけです。

だって……。

もし売れてお金があったら、絶対に不倫したくなるはず!

もし売れてお金があったら、絶対に偉そうにしてしまうはず!

もし売れてお金があったら、お笑いと向き合わなくなるはず!

どうですか、この最低な吐露。マジだもん。私なんてそんなもんなんです。

しかしバイトをしていれば、そんな気持ちは起こらないに決まってる。雑務をしてこそ、雑念が消えるんです。煩悩の全てを、時間を費やして摘んでいくしかない。バイトこそ幸せの根源にあるものなんだ。

「なんでなんですか。僕らは1日でも早くバイトを辞めるために頑張ってるんですよ!」

ある後輩はそう言う。よーく、聞いてください。お前ら本末転倒なんだよ。私はお笑いをするためにバイトをしてるんだ!

お笑い、ひいては芸能界はモヤや霞みたいなものだ。実態はなく、掴むことなどできない。だから、私のような凡人は別の所でお金を稼いで、そのモヤの中にいさせてもらうしかない。

これぞ真理だ。全ての答えはバイトの中にある。

世の中にはいろんなバイトがある。ガッツリ肉体労働の引越や、ちょっとしたアンケート、ドップリ水商売、居酒屋もあれば、することがないテレアポもある。キツかったらキツイほど魂が震えるし、楽だったら楽でそれはうれしい。

そもそも40まで息をするようにバイトしていたのだ。辞めたらきっと心が塞ぎ込むし、体を壊すだろう。バイトを辞められないという謎のプレッシャーはあるが、私はそれを楽しんでいる。だから私は気楽な様子でみんなにこう宣言する。

「あ〜、バイト辞めたくない」

(構成:キンマサタカ)

次回の『みなみかわのないないはなし』は、3月21日(火)更新予定です。お楽しみに!!


プロフィール
 
みなみかわ
1982年生まれ。大阪府出身。2015年7月〜2019年1月まで「ピーマンズスタンダード」として活動。 平成25年度 漫才新人大賞決勝進出。呼吸法で痛みをなくすロシアの武術「システマ」を体得。2008年にはピンで『あらびき団』(TBS)でプチブレイク。『エンタの神様』(日本テレビ系)にも定期出演。『ゴッドタン』(テレビ東京)、『お笑い向上委員会』(フジテレビ)、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)など人気番組への出演が続き、再ブレイク。Twitter:@p_minamikawa、YouTube:みなみかわ