ラッパーの「いい切る力」にパワーをもらう

人間である以上、自分のすべてに自信を持つことはできません。にもかかわらず「やる」と口に出して本当にやる。そこに人としての力を感じ、それがラップの強みだとも考えるのです。

根っこにあるのは「根拠のない自信」かもしれません。が、結果として何かにつながるのであれば、それもまた力であるはず。

いずれにしても、自信がなかったところをズバリと指摘されたり、ラッパーの「いい切る力」にパワーをもらったりした経験があるからこそ、文章を書く人もラッパーに学んで自信を持つべきだと思っています。

その自信には根拠がないかもしれないし、ハッタリの部分も多分に含まれているかもしれない。しかし、気持ちに嘘がないのであれば、それはいつか、読む人を納得させる力となりうるはずだからです。

ただし、そのためには自分をとことんさらけ出す必要があります。書き手が思っているよりもずっと、読者は賢く、鋭い視点を持っているものです。つまりハッタリをかました場合でも、その中身がスカスカであったとしたら、すぐにバレてしまうということ。

中身のなさがバレてしまったとしたら、当然ながら信用を失うことになり、場合によってはもう二度と評価されなくなってしまう、ということも考えられます。

だから読者をなめてはいけないし、こちらも、なめられないような芯を持っていなくてはいけないのです。

▲ラッパーの「いい切る力」にパワーをもらう イメージ:Sergiy Tryapitsyn / PIXTA

なお余談になりますが、僕がライターになろうと決心したのは、2018年に亡くなったECDというラッパーの「アタックNo.1」という曲のリリックがきっかけでした。

1992年のファーストアルバム『ECD』の後半にひっそりと収められていた、どちらかといえば目立たない曲です。が、いろいろつまらないことで悩んでいた自分の背中を「やってみりゃいーじゃん!」とECDさんが押してくれたような気がしているのです。