コロナ禍になって黄金時代からスランプへ
――その後、group_inou結成に至ったのには、どういう経緯があったのでしょうか?
imai もともと知り合いだったんですけど、二人とも同じタイミングでメンバーがいなくなってしまって。じゃあ、ちょっと遊び感覚でやってみようって感じで。最初は本当にノリでやっていたユニットだったんですけど、徐々にいろんなイベントに呼んでもらえるようになって、それで続いていった感じですね。
〇group_inou / EYE[galtv]
――そういうきっかけだったんですね。group_inouの「PR」という主催イベントの人選がめちゃくちゃ良くて、“この人たち、いいセンスしてるな”って偉そうに思ってたんですが…(笑)。
imai (笑)。
――imaiさん、cpさん、それぞれからは全く感じないんですけど、group_inouとしてライブを見ると、めちゃくちゃバイオレンスを感じるというか、ヒリヒリする緊張感があって。それがとてもカッコいいなって。
imai ありがとうございます。ヒリヒリしてたでしょうね。あの頃の二人の精神性が、そのまま音楽やパフォーマンスになっていたと思います。
――『MONSTERS』の話になるんですが、めちゃくちゃ素晴らしいのは当然として、imaiさんの興味の範疇、その広さと深さがよくわかるなって。あと、偏執的に好きな自分を俯瞰で見ている視点を持っているのもスゴいなって。こういう作品は得てして視野の狭い作品になりがちなんですけど、このまとまりを出せるのはその視点がないとできないと思いました。
imai めちゃくちゃうれしいです。それは、もともと持ってる自分の気質と、一人になってから学んだやり方がいい塩梅で配合されたんだと思います。じつはコロナ禍になってから、初めてのインタビューがこれで。
――え! そうなんですか。
imai まず、イノウが休止になって、2017年から人生的に言うと、何度目かの黄金期というか……。
――黄金期!?(笑)
imai そう、気持ち的に(笑)。イノウのときは自分が引っ張っていかないと、みたいな責任を勝手に感じていて、ガチガチになっていたんです。けれど休止になって、そこから開放されたのもあって、“その振り幅でなんでもできるじゃん”みたいなマインドになって。最初は精力的にライブ活動をするつもりはなかったんですけど、今まで出演してなかったクラブ界隈の方からもオファーが来るようになって、それがうれしくて逆に一人になってからのほうがライブ出演が増えたんです。
――なるほど、ソロになってからのほうが誘いやすくなったんですかね。
imai かもしれませんね。あと、最初は全然お客さんが来なくて、一人でやるってなったら、こんなにも誰も来なくなるんだって。それが逆にワクワクにつながったんですよね、再デビューじゃん! みたいな。その時期に中村佳穂ちゃんとか、パソコン音楽クラブとか、いろいろなジャンルの人と交流できるようになって、どんどん友達が増えていって。
イノウのときは、自信がないからツッパってて、ハリネズミみたいになってたんです。それが友達が増えて、人と話すことが多くなって、ライブをやる場所がすごく増えた。それで、刺激もらいまくるみたいな、良い循環になってたんです。それこそコロナ禍になるちょっと前、渋谷の全感覚祭とかがあって、自分の周りの人たちも盛り上がってて……。
――いい方向に行ったんですね。
imai そうなんです。ちょうど一人になった2017年頃から、才能ある面白い人たちがガンガン表に出てきて、ジャンルの境も無くなってきて。あの当時、僕が見ていたAIR JAMの盛り上がりとか、本で読んでいた渋谷系のワクワク感みたいなものが、これから始まるのか? みたいな期待がありました。
――自分が憧れていたシーンの匂いがあったんですね。
imai はい。正直、フェスのヘッドライナーが全然変わらないのとか、純粋に音楽ファンとして“面白くねー”と思っていて。その感じが全部ひっくり返るかもと思ったんです。そこから……コロナ禍になっちゃうんですよね。
――ああ……。
imai くじけましたね。気持ち的に一番盛り上がっているときにガツーンとやられちゃって、何もできなくなっちゃって。若い頃は家に籠って、一人だっていくらでも曲なんて作れたんですよ。それが30代半ばくらいからそうじゃなくなってきて、新たな人との出会いとか、新しく行った場所からパワーを貰って、音楽を作ってた。ようやく新しいやり方を見つけたと思ったら、それが突然できなくなったわけなんで、絶望ですよね。