「スタンドかげん」で励ましてくれた二人
――『MONSTERS』の制作ですが、構想はいつからあったんですか?
imai アルバムの作り始めが2019年末で、まだコロナじゃないぐらいですかね。ソロになってからの数年で、とにかくライブをやりまくって、少しマンネリになってたんです。そんなとき、パソコン音楽クラブの楽曲で、長谷川白紙くんがボーカルを務めた「hikari」のリミックスをやらせてもらって、久々に歌モノを作ったんですけど、けっこう反応があって。ライブで披露すると、やっぱりインスト曲とは違う盛り上がりがあるんですよね。じゃあ久々に歌モノやりたいなっていうのが1つ。
あとは、ソロ活動で出会った方々と作ってみたいなって思いがあって、勝手に一緒に曲を作りたい人をリストアップしてたんですよ、それこそトリプルファイヤーの吉田くんとか。『MONSTERS』の参加メンバーは一斉にオファーして、皆さん快諾してくれたんですが、その一ヶ月後とかに緊急事態宣言になって……。
〇imai / W杯 feat.吉田靖直[Evening Tracks]
――うわー、それはキツイですね。
imai そんな状況で歌詞を書くのも難しいだろうし、僕も混乱していて、始まってすぐに制作が止まって。じつはその年、8月にO-EASTでリリースパーティーすることまで決まってたんです。
そもそもは毎年夏に、中村佳穂ちゃん、in the blue shirt、踊Foot Works、パソコン音楽クラブで「BONUS STAGE」っていうイベントをやっていて。1年目は江ノ島のオッパーラでやったんですけど、2年目もやったらみんな有名になってて、100人のキャパに600人以上の予約メールが来て、主催の僕に苦情が来るっていう(笑)。
――あはははは(笑)。
imai その話をO-EASTの方にしたら「じゃあ、うちでやったらいいじゃん」となって。さらにアルバムを出すなら「レコ発にしたら?」って話になってたんですけど、それも流れちゃって……。ニュースを見たら暗い話ばかりで、それこそ知り合いの店が潰れたりとか。参っちゃってたんです。
――ツラいですよね。
imai 自分にとっての『MONSTERS』って、過去最多のミュージシャンが参加している作品なんですよね。それもあって、人と会いにくい世の中だと制作がストップしちゃったんですけど、あるときに“いや、逆に今こそ作んなきゃいけないかも”って。僕、ソロになってからは、特に人との出会いをパワーにしてきたから。だとしたら、今こそ自分の意志を作品にすべきだと思って。
SNSを見ると、不安だから些細なことで喧嘩してたり、憎しみ合ってて、これはヤバいなって感じたんです。時間がかかっても、絶対に“このアルバムを完成させなきゃ”と思いました。それで自分がいいと思える作品ができたら、自分のことを肯定してあげれると思ったんですよね。
――めちゃくちゃいい話ですね。
imai 普段だったら、そう思ったらすぐに動けるんですよ。でも、やっぱり立ち止まっちゃたりとか、なかなかスムーズにはいかなくて。そんなツラい時期を励ましてくれたのが、山本さほさんと五明さんだったんです。僕らが集まっていた「スタンドかげん」は友達のお店なんですけど、コロナ禍にオープンしたのに、たくましく営業してて。その店で、二人が「大丈夫ですよ!」って励ましてくれました。かげんと二人には、まじで感謝です。あの場所がなかったらヤバかったですね。
――それが『39歳の免許合宿』につながっていくんですね。マンガでも描かれてますが、imaiさんと五明さん、二人の仲の睦まじさ。あとは、五明さんはもちろんだけど、やっぱりグランジって面白いんだな! と思いました。
imai そうなんですよ、漫画の才能がエグすぎて。この漫画、誰に見せても面白いって言われるし、それこそ五明さんを知らない友達も「めちゃくちゃ面白かった!」って。僕自身も、サルゴリラの児玉さんとかバイク川崎バイクさんとか、お笑いファンとして舞台で見てた人たちが「うわ、imaiさんだ」とか言ってくださって。
――imaiさんを知らなかった方にも、この漫画を通じて届いた感じがありますよね。
imai マンガの登場人物として知ってもらえるのも、それはそれでうれしくて。この作品のおかげで、お互いの友達に名刺を配り終わってる状態なのがとてもうれしい。あと、五明さんにも「自分で言うのかよ」って突っ込まれたんですけど、マジで僕がいいって思ってる人は売れるんですよ(笑)。
――あはははは! それを自分で言う人なかなかいない(笑)。
imai でも、本当なんです(笑)。千鳥とか、それこそ昔から大好きでライブに行ったりしてて、でも東京だと単独が売り切れてなかったり。“なんで、こんなに面白いのに……”とかずっと思ってて、友達に勧めたりしても全然チェックしてくれなくて。そのくせ、あの頃は無視してた友達が「相席食堂サイコー!」とか言って、僕に勧めてきたりするんですよ(笑)。