リアルな絵は諦めて自分なりのコツを掴んだ

――秋山さんは創作意欲がすごくある印象です。イラストを描くのは、ネタづくりと似ている部分があるのでしょうか。

秋山 似ているような、違うような……どうなんでしょう。イラストもダジャレとかだったりもするし、シチュエーションだったりもするし。

――『#秋山動物園』で描かれているイラストの2コマ目も、全部オチの方向性が違いますよね。カブっていないのがすごいなと思います。

秋山 そうですね、それを考えるのはすごく楽しかったです。出版が決まってから一気に40種類のイラストと、描き下ろしの4種類に2コマ目をつけたんですよ。スピード感的には大変さもありましたが、自分が描きたい動物から描いていったら、どんどん描けました。

――イラストを描く時間は自分で決めているんですか?

秋山 移動のときとか、更新したいなと思ったときに描いています。不定期でも描き続けていることはアピールしたい。最近は、もう動物を出し尽くしてしまったんですけど(笑)。昨日もちょっと描こうかなと思い、“ハリネズミいいかも”って考えて30〜40分くらい描いていました。ネタを書いているときの箸休めみたいな感じです。

――イラストのタッチも魅力的ですが、意識しているとか、影響を受けた人やイラストはあるのでしょうか。

秋山 あんまり意識しているものはないですね。僕、高校時代は美術工芸コースに通っていて、美大を目指したり、イラストや美術関係の仕事を目指したりする同級生と一緒にいたんです。イラストもそうですけど、みんなリアルな絵がめちゃくちゃうまくて……その頃から“自分はリアルな絵は描けないな”って思っていました。

学生時代は、それがただの劣等感でしかなかったんですけど、今となっては“じゃあ(リアルな絵は)描かなきゃいいんだ”と思えるようになって。それでラフに動物とかを描いているうちに、うまくなってきて、自分でも手応えを感じるようになりました。線がきれいになってきたな、みたいな感じで。

微々たる差なんですけど、タッチもペンの太さも曖昧だったのが、シリーズ化して固まってきました。最初は動物の毛並みとか細かく描こうとしていたのが、いま見るとよくわかりますね(笑)。誰かに影響を受けたというよりは、徐々に自分の中でコツを掴んできた感じです。

▲描くことで気づいていったことも多かったそう

やりたいことはイラストの展示会

――コントのネタの場合は、岡部さんや菊田さんにやってもらって展開を足したり引いたりもすると思いますが、イラストは秋山さんの判断だけで描けますよね。

秋山 そうですね。だから、すごく不安になるときがあります。これで大丈夫かどうか、周りにめっちゃ聞きましたもん(笑)。いい感想をもらったときにはすごくホッとしました。

『#秋山動物園』にもシュールな部分とか、「これ伝わるのかな?」みたいな部分があるんです。動物ごとに一言タイトルみたいなのをつけているんですが、その塩梅にはこだわりました。説明しすぎたくはないけど、伝わってほしいみたいな。こちらが言葉にしすぎるんじゃなく、読者の方に気づいてほしい。そのほうが読者の方も気持ちいいんじゃないかなと思います。

――ハナコのコントも、あるあるだったり、細かいところへのこだわりだったりが魅力ですが、 この本にもそれが表れているように思います。

秋山 たしかに、この本も僕らの“あるある”を動物が体験している部分がありますね。僕、よくカフェに行くんですけど、土日って都内のカフェ、どこも満席じゃないですか。で、入れなくて諦めてしまう。そんな僕の経験から発想を得て、ナマケモノだったら絶対にカフェ争奪戦には勝てないだろうなって。それをイラストにしてみようとか、そういう経験とか、あるあるを掛け合わせる部分は、いつものネタづくりと似ているかもしれません。

――『#秋山動物園』からの展開も含め、秋山さんご自身が今後やりたいこととか、野望みたいなものはありますか?

秋山 まずは展示会をして、リアクションを見たいです。『#秋山動物園』もそうですけど、僕のイラストを見て笑ってもらったりとか、話のタネになって盛り上がってくれたりしたらいいなと思っています。今回のサイン会でも直接リアクションを見られて、そこからまた新しいことを思いついたり、やりたいことが出てきたりしたので。

全部のイラストを壁に飾って、展示会をやって……で、来てくれた人がお気に入りのイラストと写真を撮っている姿を見たいです。どの動物が一番写真を撮られるのか気になります(笑)。あとは、イラストをアニメにもしたいですし、立体にもしたいです。

▲可愛くて面白い、秋山の描く動物のイラスト