京大卒が三人揃えばわかり合えるかも

――『リップグリップの出典』は、ラジオ冒頭のトークの内容の出典元として本を紹介する、というコンセプトで始めたとお聞きしました。他にPodcastを始めたキッカケがあったら教えてください。

倉田 作家として参加してくれている京都大学の後輩のクシロくんが、大学を卒業して東京に来るタイミングで「一緒にラジオをやりませんか」と言ってくれたんです。最初は京大生が三人もいるから「京大生が何かに挑戦して失敗するラジオにしようか」って話を進めていました。そのタイミングで、ネタ作りって24時間できちゃうから、それで埋まっていくと自分の人生が枯渇していくな、趣味の時間を作らなきゃと思い始めたんです。

それで、20代のうちにやりたいことなんだろう? となったときに「死ぬほど本を読む人生を送ってみたい」に行きついたんです。それに三人も京大生がいたら、自分が本の話をしても聞き手の二人がわかってくれるだろうと。それで、僕から企画を持ちかけて始まりました。

本を全部読んで内容を整理しなきゃいけないので、他のコンテンツに比べて時間も労力もかかるんです。そして、聞き手が面白くなきゃいけない。双方を実現できる人って少ないと思うので、そこは我々が強い面なのかなと。岩永は本の話も面白かったですし、ゲームのプレゼンをテレビ番組でやったりしたこともあるので。

今後『リップグリップの出典』が有名になって、案件で「この本を紹介してください」って言われたときに、もし仮に全然興味のないジャンルでも僕と岩永とクシロくんがいたら、面白く紹介できると思います。興味がない本を読む技術も僕らは持っています。大学の授業で、どうでもいいような研究の本を読まされて、その本のレポートを書いて少ない単位を貰う、という流れに耐えてきましたから(笑)。

▲単位を取るのに必死だった学生時代を振り返る

――倉田さんは、ラジオでは新書に縛って紹介されていますが、それには何か理由はありますか?

倉田 小説を紹介する人はたくさんいるじゃないですか。だけど、教養書のなかで枠組みがあるのに、新書が注目されないのはなぜだろうと思ったんです。新書を扱っている出版社がいっぱいあって、なおかつ何を書いてもよくて、まとまりがないから、というのがわかりやすい理由だと思うんですけど。

岩永 いい意味で、ジャンルが幅広いよね。

倉田 でも、これで新書に絞っていったら“何かあるかもしれない”と思って始めてみました。同時に僕個人のYouTubeチャンネル『新書といっしょ』も始めて、ある種の人体実験のような形で、1年間を目標に新書を読みまくっています。毎週2冊紹介しようと思っているので、単純計算で52週104冊、全く興味ない知識がたくさん入ってきて、それを理解するところまでを皆さんに共有すると、僕はどんなになっているんだろうっていうのが気になるので(笑)。

――新書というジャンルは、テレビで取り上げられる機会ってあまり多くないかもしれません。

倉田 「新書大賞」とかあるじゃないですか。出版社や書店の方が100人ぐらい集まってランキングを決めていて、読んでみるとクオリティが高くて面白いものがしっかり選ばれているのに、それを追う人は少ないですよね? 

例えば、直木賞や芥川賞だったらノミネート作品を全部読む人がいるじゃないですか。「今期の直木賞はどれかな」「俺はこれだと思う」みたいに盛り上がることはありますけど、新書大賞で「私、公開されている20位まで全部読みました」って聞いたことがない。でも、プラットフォームは整備されているし、それぞれの色もある。本屋に行ったときに、ベストセラー本の平積みや縦に並んでいるところに「何十万部!」って新書が置いてあることも結構あるんです。

岩永 それこそ『バカの壁』(著:養老孟司/新潮新書)とか、有名になる作品もあるしね。

倉田 『武士の家計簿』(著:磯田道史/新潮新書)も、新書から映画化されたりしているのに、“新書”っていうものはあまり知られていない。それは、説明できる人がいないからだと思うんですよね。新書全体を見たときに、これとこれがどういいのかって比較できる人がいなくて、能力の敷居が高いというか。

岩永 「自分ならできる!」と(笑)。

倉田 自分ならできる!(笑) 「研究書を読め」って言われたら無理だけど、新書ならできると思った。

岩永 ジャンルは多岐にわたるけど、倉田自身が学ぶことが好きっていうのが前提にあるからね。全然知らない話でも聞けちゃう、学べちゃう、読めちゃうから。

――それはすごいですよね。

岩永 僕は『スケベ大学』という成人向けのコンテンツについて語るトークライブをやっているんですけど、普段の倉田にそういう話をしても全く受けつけてくれないんですよ。それこそ好きな女性のタイプや恋愛の話も、中学のときからしたことないです。

でも、新書として真面目な文脈で読むにはいいみたいで、しっかり読んで吸収しているんです。この前も『射精道』(著:今井伸/光文社新書)っていう新書を読んで、射精のことを学問的に学んだ内容をLINEで僕に送ってくれました(笑)。能動的に自分から学んでいくのがうまいから、新書との相性がいいのかなと思います。