気になっている「記号接地問題」とは?
――たくさんの本を読まれているなかで、お二人が興味深かったジャンルなどありましたら教えてください。
倉田 新書の選び方として「今、自分が全く知らないジャンルに手を出そう」と決めています。好きなジャンルだけ読んでいくと、好きなものだけで人生が終わるし。せっかく新書と縛っているので、今は興味ないものでも知識をどんどん広げていきたいので、特定の分野を深めようということはないんですね。でも最近、読んだ本で気になったのは「記号接地問題」ですね。
YouTubeチャンネル『ゆる言語学ラジオ』に出演されている今井むつみ先生と、秋田喜美先生という方が共著の『言語の本質』(中公新書)という新書を読んだんですが、その新書のメインテーマが記号接地問題だったんですよ。
例えば“リンゴ”って聞いたときに、僕ら人間には味覚や食感という感覚があるじゃないですか。ただ、リンゴを全く知らない人にリンゴを説明したとき、その感覚を得られるのか。つまり、感覚と記号が接地しているのかっていうのを記号接地問題と言って、AIは未だに解決していないんです。文字の情報やいろいろな感覚が、データとして入っているだけ。ちゃんとリンゴの甘さを理解しているのかといったら、たぶんしていなくて、それをどうやって接地させるのかっていう問題です。
人間がやっている仕事が、もしかしたら今後AIに置き換えられるっていう話はよく聞きますし、本を読んで紹介するのも、AIがやったほうが早い可能性もあるかもしれない。それで、記号接地問題の感覚にどうやって接地させるか。
受験勉強とかは、AIのほうがはるかに強いんです。情報を情報で答えていくだけの作業ですから。それに加えて、感覚にどう接地させるかを本で学べるんだったら学んでおきたいなと思っています。基本的に芸人は感覚なので、情報を学んでそれをいかに人間と喋るかを分野として学べたら最高だなっていう興味はあります。
岩永 僕はどちらかというと、うっすら知っている分野のものを手にとるタイプですね。サッカーはすごく好きだけど、野球はそんなに知らなくて、ルールがわかる程度なんです。「多少は知ってはいるけど、深く知りたいな」っていうとき、新書は一番便利だと思うんですよね。
倉田 実際、そういう人向けに書かれていると思う。
岩永 僕は以前、『甲子園は通過点です』(著:氏原秀明/新潮新書)っていう高校野球の監督や選手にスポットライトを当てた新書を『リップグリップの出典』で紹介したんです。この本では、情報込みでその監督に何があったかという背景も含めて説明しているなかで、監督たちの生徒への思いが関西弁で書かれているんです。それがめちゃくちゃ本音みたいに伝わってきて、すごく感動したんですよ。
活字だからこその一種の表現方法というか、方言を活字にすると、こんなに魅力的に見えるんだと思いました。YouTubeとかで“あの名場面”みたいな映像のアーカイブはいくらでも上がっていますけど、スポーツを語り継いでいくのに言語で表現するのは面白いなって思います。
≫≫≫ 明日更新の後編へ続く
学生時代の思い出を振り返りつつ、本の魅力について語ってくれたリップグリップのお二人。後編では、Podcastへの周囲からの声やオススメの本についてお聞きします!
血液型:A型
出身地:東京都 江東区
趣味:サッカー観戦、音楽鑑賞、ゲーム、謎解き
特技:勉強の指導(教え子を模試で全国1位にしました)、海外の実際にある変な法律を言える
Twitter:@lipiwanaga
血液型:B型
出身地:神奈川県 横浜市
趣味:ハリー・ポッター研究
特技:17世紀エリザベス朝の英語でシェイクスピアを演じられる、50音一発ギャグ
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