今シーズンは中堅の選手がタイトル争いに加わる

今シーズンは、中堅どころの活躍も目立っている。

現在、首位打者争いで1位を走っているのは、頓宮裕真(オリックス)だ。

昨シーズンも二桁本塁打を記録するなどの活躍を見せたが、今シーズンはパ・リーグで唯一の打率3割を記録している。(6月26日終了時点)

これまでは、第三の捕手としての起用や、一塁手としても併用されることが多いなかで、今シーズンは持ち前の打力が開眼。

5月から3割をキープしており、初のタイトル獲得も見えている。首位争いが激化しているパ・リーグでは、投げては山下、打っては頓宮の活躍が大きいだろう。

本塁打王争いは、万波中正(日本ハム)が首位を走っている。

この万波も、昨シーズンは二桁本塁打をクリアしている。今シーズンは、5月に7本塁打を記録するなどの活躍で、すでに昨シーズンの14本塁打まであと1本に迫っている。(6月26日終了時点)

日本ハムは、開幕直後に清宮幸太郎が怪我で離脱したが、それ以降は万波が主軸として引っ張っている。

全体的に若いチームだが、他の選手も底上げされていけば、今シーズンの優勝は難しくても、来シーズン以降は楽しみなチームなのは間違いない。

セ・リーグの選手に目を移すと、関根大気(DeNA)がレギュラー定着し、打率2位を記録している。

2021〜2022年も100試合以上出場はしていたが、打率は2割前半から2割5分ほどだった。

しかし、今シーズンは開幕から定着し、打率3割をキープしている。

チームメイトの宮崎敏郎もキャリアハイ並の活躍を見せているが、長打力がある選手がいるなかで、関根はいい味を出している。

ただ、DeNAの外野陣は良くも悪くも入れ替わりが激しいため、レギュラー定着に期待していきたい。

今シーズンは現役ドラフトで移籍した中堅どころの活躍も目立っている。

特に、DeNAから中日に移籍した細川成也は、中日打線を引っ張る存在と言っても過言ではない。現在、打率はリーグ3位の.319を記録しており、9本塁打と40打点はすでにキャリアハイを記録。(6月26日終了時点)

本塁打と打点は、前年までの通算6本と19打点を今シーズンだけで超える成績を残している。

さらに、5月に関しては25試合、打率.360、安打36、本塁打5、打点17を記録し、月間MVPを獲得した。

細川自身は「ドラゴンズに来て、キャンプで和田さん(打撃コーチ)に指導いただいてからです。テニスの練習などにも取り組みましたが、あれも間を取るための練習です。そういった一つひとつの練習が少しずつ、身になってきたのだと思います」とコメントを残しており、和田一浩氏の指導がマッチした要因も大きいだろう。

中日は以前から球場の特性の影響もあり、打者が育ちづらい傾向にある。そのため、細川をはじめとした選手たちの飛躍が、今後のチームを左右すると言っても過言ではない。

また、ソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎も活躍を見せている。大竹は、ソフトバンク時代の2018年に3勝、2019年に5勝、2020年に2勝をあげている。

しかし、当時のソフトバンク投手陣は、千賀滉大(現ニューヨーク・メッツ)をはじめとした層の厚さの影響もあり、なかなか出番がないまま数年が過ぎた。

そして、昨シーズンオフの現役ドラフトで阪神に入団し、登板機会を得ることができた。

その結果、現在は防御率1点台で、キャリアハイとなる6勝を記録。K/BB(奪三振を与四球で割った数値のこと)は7.67と、これまでのキャリアを見ても、圧倒的な成績を残している。

さらに、5月には4登板、3勝0敗、防御率0.33を記録し、5月の月間MVPを獲得した。先ほど紹介した細川とあわせて、この月のセ・リーグの月間MVPは、現役ドラフトの該当選手が獲得したことになる。

阪神移籍後は、坂本誠志郎とバッテリーを組むことにより、さらにいいところが引き出されているだろう。

この坂本に関して、大竹は「六大学のときから良いキャッチャーだと思って対戦していましたし、1イニング1イニング、丁寧にコミュニケーションを取れて投げられた。すごく頼もしい存在です」と言葉を残している。このコメントを見ても信頼を寄せているのがみてとれる。

また、阪神はソフトバンクから移籍してきた加治屋蓮やロベルト・スアレスを復活させている。2010年代後半のソフトバンクは多くの優秀な投手を抱えていたが、それゆえに出番が限られる選手たちがいる。そんな選手を阪神がうまく活かしきれているのも大きな要因だ。

この大竹と並ぶ活躍を見せているのが、才木浩人。昨シーズンも防御率1.53を記録し、ブレイクの兆しが見られていたが、今シーズンは村上や大竹と並ぶ活躍を見せている。5月は脅威の防御率0.63を記録しており、阪神の先発陣を支えた。

現在優勝争いをしている阪神は、夏場以降に向けて村上や大竹、才木の活躍が必要不可欠だ。

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今回紹介したように、新人王候補から中堅どころ、現役ドラフトでチャンスを活かした選手たちが躍動している今シーズンのプロ野球。夏場に入り体力も厳しくなってくるが、ここをどれだけ踏ん張れるかが今後の鍵となってくるだろう。


プロフィール
ゴジキ(@godziki_55)
野球著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)や『東京五輪2020 「侍ジャパン」で振り返る奇跡の大会』、『坂本勇人論』(いずれもインプレスICE新書)、『アンチデータベースボール』(カンゼン)を出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディア取材多数。最新作は『戦略で読む高校野球』(集英社新書)、『21世紀プロ野球戦術大全』(イースト・プレス)。Twitter:@godziki_55