東京国際大学の背番号10が大仕事を果たす

話を戻しまして、途中出場の東京国際大・11番の尾崎岳人選手は、僕でも知っているくらい有名な選手で、僕の主観で言えば、この試合のナンバーワンプレーヤー。興梠慎三選手(浦和レッズ)の姿に重なるようなプレーで、攻撃にリズムをもたらします。

そして後半15分。試合が動きます。

ここまで左サイドで独特のリズムのドリブルで異才を放っていたものの、いまいち気持ちよくプレーできていない印象があった東京国際大のナンバー10・重野祥輝選手がノリだします。

縦パスを受けると見せかけスルーして、相手と入れ替わる重野選手。攻守に憎いくらい要所を押さえて、この試合の影のMVPというべき活躍を見せていた大東文化大のSBで、キャプテンを務める清水哲太選手の「やばっ」という声がピッチに響くなか、瞬く間にセンターバックを抜き去り、ゴール前にプレゼントパス。最後は尾崎選手が仕上げました。

ここで10番が大仕事。アツイ。

死力を尽くして反撃に出る大東文化大。

▲大東文化大学の選手たち(写真:本人提供)

メンタル的なものなのか、失点後に一時的にボールロストが増えた清水選手。しかし、すぐに持ち直し、その右足からチャンスを量産。いいぞ、キャプテン。プレーで取り返せ。(忘れがちですが、これはコラムなので事実だけでなく、すがやの心の声が多数あふれています)

そして、スタンドに聞こえる試合中の会話を聞いていても、いい意味で飄々とした印象があるゲームメーカーの10番・田中選手も、少し強引にボールを運ぶようになってきました。その様もかっこいい。頑張れ、4年生たち。(事実だけでなく、以下略)

しかし、立て続けに訪れた決定機をGKのスーパーセーブとポストに阻まれると、その後、決定的な3点目を決められゲームセット。

▲東京国際大学の選手たち(写真:本人提供)

GKのスーパーセーブに

「マジありがとう!!」
「たすかったー!!」

と、スタンドから口々に叫ぶベンチ外の東京国際大の部員たちの声は

「これで負けたら、今後、自分の出番が失われてしまう!」

という当事者の要素がだいぶ含まれている感じでした。この試合はベンチ外でも、次の試合は自分にチャンスがあるかもしれない……貪欲にアピールの場を求める選手たちはすごいと思います。

試合後、膝に手をついている選手が東京国際大側に多かったことも印象的で、それほど強豪を苦しめた大東文化大に感動を覚える試合でした。

1時間後には次の試合が始まりますが、他会場の結果に沸き立つ東京国際大の部員たち。

同じく埼玉の城西大学が、大学サッカー界一の強豪・明治大学を破ったとの情報が入ったようです。しかも、ネットでスタメンを見ると明治大のメンバーは本気も本気。

いま、関東1部リーグ所属の彼らに、どれほど仲間意識があるかわかりませんが、僕が大学サッカーをしていた時期は、東京国際大・城西大・平成国際大は同じ埼玉県1部リーグでプレーしており、そのうち2チームがこうして勝ち上がっているのは、とてもエモいものがあります。

余談ですが、うち(獨協大学)のサイドバックだった「悠太」という人物は、平成国際大との試合後に、駅前のパチンコ屋で当時の向こうの監督と隣の席に座ったことがあり、挨拶をしたらアドバイスをもらったそうです。

「この店、出ないよ」って。

パチンコのアドバイスかよ。