応援団も一緒に試合を作り上げる
さあ、そんな僕の戦友で、当時だったら夢物語だった埼玉3タテの可能性を秘めた平成国際大は、現在は関東3部リーグに所属。
カテゴリー的には、関東1部の名門・流通経済大より2つ下のカテゴリーになります。流経大の誰が主力とかは、この日ふらっと見に行った僕にはわかりませんが、とにかく僕でも知っている選手、プロ注目選手がたくさんいます。
試合の雰囲気を作るのは、流経大のメンバー外選手たちによる大応援です。
応援団長「これはあいつらのためでもあるし、俺らのためでもある! あいつらが勝てば俺らの生活もうぇーーーい!!!」
そう、ここで勝てば彼らの人生も変わるかもしれないのです。
大学サッカーの応援団はめちゃくちゃいいですよ。見にきたらぜひ耳でも楽しんでほしい。
なぜなら、全国の強豪高校から部員が集まる大学サッカーでは、各々が地元のJリーグチームのチャントを持ち寄り、オーディションをして歌う曲を厳選しているので、Jリーグベストアルバムを聴いてるようなものなのです。
この日の彼らも「広島いくぞー!」とか「次、浦和行くぞー!」という掛け声のあと、チャントを歌っていました。
ちなみに、広島は「HIROSHIMA NIGHT」、浦和は「赤き血のイレブン」。隣で見ていた札幌サポの友人によると、札幌は「スティング」というチャントだそう。
満田誠選手(サンフレッチェ広島)や伊藤敦樹選手(浦和レッズ)が持ち寄ったチャントもあるのかもと思うと微笑ましいですね。
余談ですが、僕ら世代で有名な応援団長といえば、抜群に面白くて他大でも評判だった東海大の堀之内くんでした。この堀之内くん、じつは後のおもしろ荘優勝芸人の『ちゃんぴおんず』(ワタナベエンターテインメント所属)大ちゃんです。
そんな応援事情の話はこの辺にして、「流通経済大VS平成国際大」の試合を見ていきましょう。もしも、この試合にプロのスカウトが来ていたら、最もアピールできていたのは平成国際大の7番・屋宜和真選手でしょう。
ドリブル、トラップなど圧巻の技術を持つ彼もまた、3部にいるのが不思議な名手。選手表を見なくても「たぶん昌平高校出身だろ」と言い切れるほどの昌平イズムは感じましたが、この世代の昌平をよく見ていた僕も思い出せない名前。調べると、ベンチ外だったのです。よくぞ、そこからの輝き。
今日、この会場に来られて良かったと心から思える選手でした。彼はプロにならないのだろうか……。
中央を固める平成国際大の前に、流経大はウォーミングアップから際立ってうまかった14番・鈴木奎吾選手、10番・藤井海和選手の両インサイドハーフがなかなかボールに絡めないなか、次善の策という感じで高い位置を取るサイドバックを使ってチャンスを作ります。融通が効くなぁ。
それでも、なかなか波に乗り切れない流経大……平成国際大の思惑通りの展開かなという感じだったのですが、前半30分に相手のパスミスから流大が先制します。
こうなると横綱相撲に。流経大は追加点は取れないまでも、中盤の形を変えるなどして試合を支配し、隙のない展開。平成国際大も我慢強く戦いますが、決定機はほとんどないまま後半アディショナルタイムへ。
この時間になっても平成国際大はゴール前を崩せず、どうにかコーナーキックを得るしかないという感じ。しかし、このコーナーキックをゴールに結びつけます。
試合途中で、大型の選手をサイドに配した流経大に対抗する形で投入されたフィジカルに優れるSBの今野達也選手が、ドンピシャのヘディングをみせ同点に追いつきます。流経大の強さを受ける形で投入された選手が決めるんですから、サッカーって難しい。