実際に巻き込まれたくはないけど『大奥』の大ファン

――岡崎さんは去年、初主演ドラマ『花嫁未満エスケープ』(花エス)が話題になりましたが、女優として変化はありましたか。

岡崎 やはり経験したからこそ見える世界があって、意識は変わりました。例えば、主演だと自分の発言・行動などによって、現場の空気がまるで変わってくるんです。それを実感しました。だからこそ、ちゃんと自分の足で立って、視野を広げていろんなことを見なきゃいけない。それまでの現場は全部、先輩がやってくださっていました。

大変さを理解しているつもりでいても、体感はできていなかったんです。いざ自分が主演の位置に立って、初めて“こういうことか”と学べました。主演という機会をいただけて本当に感謝していますし、これからは自分がそういうポジションでなくとも、持ち続けたい意識だと思っています。責任感という言葉が一番近いかもしれませんが、すごく変わったと思います。

――俳優業の重責を感じる一方で、楽しさも増えてきたのではないですか。

岡崎 昔は楽しいと考える余裕がありませんでした。今も楽しいには楽しいですけど、それが一番にあるとは言えなくて。自分の余裕のなさでもあるんですけど、経験していないことをやるのは難しく考えることも多いですし、楽しいだけではいられません。

ただ毎回、学ぶことがものすごくあって、持ち帰られるものがあることが“次も頑張ろう”と思えるきっかけになり、自分がだんだんと深くなっている感じがします。『花エス』のときのように自分で気づくものもあれば、周りにいるステキな方々から学ぶものもあります。主演のあり方は人それぞれで全然違いますから、その都度、勉強になることがたくさんあります。

 

――『花エス』で多くの女性ファンに支持されるようになりましたね。

岡崎 等身大のリアルな役柄でやりやすく、自分でも疑問に思うことがなく、スッと取り組めました。見ていただいた同世代の女性たちからいろんな意見をいただけて、すごく励みにもなりました。

誰しも1回は経験がありそうな恋愛模様だったので、皆さんが率直な感想を言ってくださるのがうれしかったです。関係が壊れたところから始まる恋愛がまた新しくて、私も楽しんでやれていたと思います。

――ナレーションなど、仕事の幅がどんどん広がっていますね。

岡崎 今回の役柄もそうでしたが、やったことのないものに挑戦すると、発見があります。それまで感じたことのない自分の感情と出会えたりするので、未知の世界に身を置くことは大いに勉強になります。この先もずっと挑戦していきたいです。

今までは明るめの役が多かったですけど、全然違う影のある役もやってみたいですし、現代劇が多かったので、時代が違うものにも興味があります。そこで生きていた人たちは何を考えていたんだろうとか。立ち居振る舞いだって違いますし、難しいとは思うんですけど、チャレンジしたいです。

じつは大奥が舞台の作品を見るのが大好きなんです。外に見えているのは煌びやかで豪華絢爛な雰囲気でありながら、内に秘めているものは全然違う。水面下で行われる交錯がたくさんあって、その二面性のある感じがすごく好きなんです。現代であんなメラメラするようなことが起きたら、絶対に巻き込まれたくはないですけど(笑)。

大奥に関する作品は、昔のものからほとんど見ています。時代劇と聞くと難しそうで、以前は自分から進んで見たりしなかったんですけど、多部未華子さん(『大奥〜誕生[有功・家光篇]』)や菅野美穂さんのもの(『大奥〜永遠〜[右衛門佐・綱吉篇]』)をよく見ます。

初めて見たときに衝撃を受けて、それから興味を持つようになりました。下に見られて雑な扱いをされていた位が一番下の子が、のしあがって上に行ったりすると、“報われてよかったな”とか、見ていてスカッとするんです(笑)。

――時代劇の岡崎さんも楽しみです。

岡崎 頑張りたいです。叶ったらいいですね、言霊で!

――今後の目標は?

岡崎 自然体な芝居が好きなので「いそうだよね」と言われるのが理想です。自分にはないものを自分のものにして、本当にそこで生きている人になりたいし、役と自分が重なったときが一番強いと思います。常に自然体ということを頭のどこかに置いて、演じることを心がけています。

――最後に20代のうちにやっておきたいことを教えてください。

岡崎 20代後半になってみて、俯瞰して見てみると何もかもが吸収だなと思うんです。つらいことや苦い経験も、時間が経てば自分の深みになっていく。それはレベル、経験値が上がったということ。経験しなくていいような苦しいことも、絶対に自分にいい形で返ってくると思います。

お芝居に寄った話かもしれませんが、そういう気持ちを知れるのも人生においては大切なこと。精神論に聞こえてしまうかもしれませんが、自分に起きることって、自分に与えられた使命のようなものだと思うんです。私は“試されているんだ”と思うことで、自分を奮起させて頑張るようにしています。

いろんな経験をして、モチベーションの上げ方、頑張り方みたいなものをわかってくるのが20代。起き上がって、転んで、転び方を知る。20代はそれの繰り返しだなって思います。それを経て、強い30代になる。20代は初めてのことに出会う瞬間が多くて、苦しい時期だとも思います。でも、このあとに明るい30代があると思って頑張ります。転ぶことも厭わずにやりたい20代です!


▲映画『緑のざわめき』は9月1日から公開
映画『緑のざわめき』
©Saga Saga Film Partners
出演:松井玲奈、岡崎紗絵、倉島颯良
草川直弥(ONE N' ONLY)、川添野愛、松林うらら、林裕太
カトウシンスケ、黒沢あすか
監督・脚本:夏都愛未
プロデューサー:杉山晴香 / 江守徹
撮影:村松良 / 照明:加藤大輝 / 音楽:渡辺雄司
配給:S・D・P / 製作:「緑のざわめき」製作委員会

9月1日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
公式X (旧ツイッター):@midori_zawameki
公式YouTube:映画『緑のざわめき』公式アカウント
プロフィール
 
岡崎 紗絵(おかざき・さえ)
1995年11月2日生まれ。愛知県出身。2015年より俳優として実績を重ね、代表作ではドラマ『教場Ⅱ』、『ナイトドクター』、『オールドルーキー』等、話題作に出演。『花嫁未満エスケープ』では主演を務めた。映画では、今泉力哉監督の恋愛群像劇『mellow』(20)でヒロイン役を好演。近年の出演作に『名も無い日』(21)、『シノノメ色の週末』(21)がある。Instagram : @sae_okazaki