投手力と対応力の高さは日本が世界一
U-18を長年見ていると、ワールドカップやアジア選手権でも日本の投手力は世界一と言ってもいいだろう。
U-18に関しては、2004年にダルビッシュ有や涌井秀章を擁して準優勝をしたが、ワールドカップ(旧称は「AAA世界野球選手権大会」)に関しては、2004年しか上位進出できていない。
その後、侍ジャパンが創設された2011年10月以降に本格的にU-18も力を入れるようになったと見ている。
その結果、安定した成績を残したことはもちろんのこと、2013年や2015年の決勝は地上波で放送されるほどだった。
また、実力的な部分で見ても、2011年から昨年までのワールドカップとアジア選手権では、下記の投手が表彰されている。
・2011年左投手:野田昇吾
・2012年先発投手:藤浪晋太郎
・2013年先発投手:安樂智大
・2013年救援投手:山岡泰輔
・2015年先発投手:佐藤世那
・2016年左投手:寺島成輝
・2017年救援投手:田浦文丸
・2019年先発投手:奥川恭伸
・2022年救援投手:川原嗣貴
上記を見ると、ほぼ毎大会選ばれているのがわかる。
この投手以外にも、大会中に活躍している投手は多くいることから、WBCを3度制覇しているフル代表と同様に、U-18の投手陣は世界一といっても過言ではないだろう。
また、毎年開催地が変わる大会だが、各世代を見ても環境への対応力の高さも見受けられる。
2011年から見るとワールドカップとアジア大会の成績は下記である。
・2012年世界選手権:6位
・2013年ワールドカップ:準優勝
・2014年アジア選手権:準優勝
・2015年ワールドカップ:準優勝
・2016年アジア選手権:優勝
・2017年ワールドカップ:3位
・2018年アジア選手権:3位
・2019年ワールドカップ:5位
・2022年ワールドカップ:3位
この成績を見ても、10年以上も安定した成績を残している。
今大会も、メンバーが小粒と言われていたのを覆すかのように、1試合を残して予選を突破した。
夏の甲子園終了後の調整が難しいなかでも、各国の環境に適応しながら勝ち続けているのは、日本野球のレベルの高さに違いない。
U-18の選考の課題は前準備と選考方針
近年はセンバツ終了後に代表合宿を行うなど、U-18は以前よりも前準備の期間が設けられている。
しかし、プロ野球の代表チームとは異なり、チームづくりの部分で難しさがある。
具体的には、夏の甲子園終了後に開催のため、多くの選手のピークは過ぎていること。また、選手選考も以前よりも融通が効かなくなったように感じられる。
そのため、選考は1校に偏ったりしないことや、かつての清宮や藤原恭大や小園海斗のように、1年生や2年生でいい選手は選ばれづらくなった可能性はあるだろう。
チームとして中長期の成熟が難しいことを考えると、選手個人のポテンシャルの高さや勝ち方を知っていることを重視し、明治神宮と春夏甲子園の優勝校・準優勝校+ a(ドラフト上位候補)でチームを作るのもいいだろう。
WBCも前年優勝したチームから多く選出されているのは、やはり選手個人の能力が高いからだ。この選手の選出に関しては、監督が目指す野球によって大きく異なる。
永田裕治氏が率いた2019年と馬淵史郎氏が率いた2023年の選考は、長打力を武器にする選手が少なかった。
2019年は、夏の甲子園の決勝でホームランを放っている井上広大や、2年から活躍していた黒川史陽が選ばれず、2023年もスラッガータイプはほとんど選ばれていない。
高校野球は金属バットのため、短期間で木製バットに適応するために、小技ができたりスピードがある選手が選出されているが、上記に挙げた2013年や2015年はもちろんのこと、3位になった2017年の大会を見ても、世界に対して打力は負けていない。
ただ、小技や走塁で揺さぶりをかけて相手のミスにつけ込める選手を揃えるのは、勝つ確率を高められる見立てもあるのだろう。
実際のところ、2015年にアメリカに勝利した試合は、オコエの機動力で揺さぶりをかけた結果、相手のミスで勝利した。
しかし、一定水準以上の打者が揃わないと、9月5日のオランダ戦のように試合終盤までノーヒットに抑えられることもあるだろう。
今後も多くの課題は出てくると思うが、長年世界のトップクラスを走っている日本。ワールドカップで悲願の世界一にも期待したい。