同世代に勧めたい昭和の名曲は?

――今の若い方、それこそ阪田さんと同世代の方に勧めたい昭和の名曲はありますか?

阪田 たくさんあるんですけど……百恵ちゃんだと『絶体絶命』ですね。曲のなかで1人2役をやっているんですけど、「別れて欲しいの 彼と そんな事は出来ないわ 愛しているのよ 彼を それは私も同じ事」冒頭だけで、違う女性2人を見事に歌い分けている。めっちゃカッコいい! このカッコよさは今の子も絶対わかるはず!って思います。

――カッコいいですよね。作詞が阿木燿子さん、作曲が宇崎竜童さんですね。じゃあ、男の子が歌ってたらいいなって思う曲はありますか?

阪田 それならジュリー(沢田研二)の『カサブランカ・ダンディ』ですね。「ききわけのない女の頬を一つ二つはりたおして」って、今やったら完全にコンプラNGやろ、みたいな歌詞ですけど(笑)。

――たしかに(笑)。

阪田 でも、“あの時代だからこその歌詞やろうな”と私は解釈して、それってすごくカッコいいなと思ったんです。だから、カラオケで同世代の男の子がこれをいきなり歌ったら、「おおっ!」となるかもしれないです。あとはジュリーの昔の映像とか見ると、もう色気がすごくて、ハットを投げるところとかキャー!って感じになっちゃいますね。

▲ジュリーの色気について熱弁する阪田マリン

――年齢を重ねられた今もカッコいいのがすごいです。

阪田 そうですね。それから、私が“すごくカッコいい!”と思ったのが、レコード大賞の映像で、和田アキ子さんが『あの鐘を鳴らすのはあなた』で最優秀歌唱賞を受賞して号泣しちゃったら、ジュリーがエスコートしてステージまで連れて行って……めっちゃカッコいい!って。自然にやられているのがすごいですよね。

――しかも、ジュリーも候補だったはずですからね。悔しいはずなのに、それをおくびにも出さず……。

阪田 そっか! たしかにそうですね、ジュリーやっぱカッコいいですね!

――そのほかに憧れの方っていますか?

阪田 あげていったらキリがないんですけど(笑)、男性だと舘ひろしさん大好きですね。『皮ジャン反抗族』って映画があるんですけど、その舘さんがめちゃくちゃカッコよくて、痺れましたね。舘さんの曲で『朝まで踊ろう』という曲があるんですけど、その曲もめちゃくちゃカッコいいんです。

マネージャー じつは、その曲は長戸大幸プロデューサーがプロデュースと作曲してるんです。

阪田 そうなんですよね、B ZONE GROUPのプロダクションに入ってから知ったんですけど、もともとすごく良い曲だなって思っていてこれも縁ですね。

――長戸さんだったんですね! それは本当に素晴らしい縁ですね。女性で好きな方いらっしゃいますか?

阪田 加賀まりこさんですね。本当に美しい。それこそヒットスタジオとか見ると、出演者に「あなたさっき挨拶しなかったわね」とか言ってて、カッコいい~!って。あとは中原めいこさんも好きです。あの方ご自身で作詞作曲楽曲が多くて、とにかくオシャレなんですよね。

――中原めいこさんまでマークしてるとは! 恐れ入りました。

阪田 日本より先に海外で、シティポップで再評価されましたよね、もっと日本が早く気づかないと!って勝手に悔しがってました(笑)

『ホットロード』に憧れてガソリンスタンドでバイト

――昭和レトロの魅力は? と聞くとざっくりした質問になっちゃうんですけど、阪田さんはどういうところに惹かれているのかな、と思いまして。

阪田 さっき話した、レコードで聞くことによって音楽がより一層よく聞こえるとか、昭和レトロに対する憧れを話すと、それこそ当時を知る人からすると「今のほうがいいよ!」って言われちゃうかもしれないんですが、私は現代が完全過ぎるんじゃないかなと思っていて。昭和の不完全さにすごく惹かれるんです。

例えば、好きな人がいるとして、今だったらすぐにLINEで電話できちゃう、なんならビデオ通話ができちゃう。それっていいことなんですけど、昔は好きな子の家に電話をかけても、その家に一台しかない黒電話にその子が出ないかも知れない。お父さんとかお母さんが出ちゃうかもしれない。だからこそ、好きな子が出たときの喜びって、今には絶対ないですよね。それが羨ましいって感じるんです。

――そこを羨ましいって感じられる阪田さんの感性が尊いと思います。「ダイヤル回して 手を止めた」とかも、今じゃありえない話ですよね。

阪田 本当そうです、私たちは恵まれてるから、逆にないものねだりになってるのかもしれないですけど、憧れなんですよね。

――阪田さんは楽曲以外にも、いま着てらっしゃるような服とかも集められているんですよね。

阪田 そうなんです、今日の衣装はメルカリでゲットしました! “これもうミラーボールやん!”と思って一目惚れです。あと、リサイクルショップでゲットしたりとかもします。私、肩パッドの入ったバブルスーツが好きなんですけど、あまり皆さん買わないのか、めっちゃ安いコーナーに置いてあったりするんですけど、私にとって見たら「宝の山やん!」みたいな(笑)。

――ファッションのほかにも集めているものはありますか?

阪田 お店の名前が書かれたマッチ箱は集めてますね。60個くらいあるかな? 今はもうないお店もあったりするんですけど、どんなお店だったのかなって想像するのも楽しいです。

――これまで阪田さんが好きな昭和の文化をお聞きしてきたんですけど、一番思い出深いシーンや言葉はありますか?

阪田 『スローなブギにしてくれ』という映画の終盤、主演の浅野温子さんが二人の男性のあいだで揺れ動くんですけど、同世代の男の子を選ぶんです。バーで浅野温子さんと、その男の子が再会するシーン。久々に会った二人を見て、マスターが「再会を果たしたってことで……」と言って、南佳孝さんの『スローなブギにしてくれ』を流すんですけど、そこがすっごくカッコよくて、マスターナイス! みたいな(笑)。こういうオシャレさって、すごく昭和っぽいなって思うんです。

――映画を見たくなりました! では最後に、今後の目標をお聞きしてもいいですか?

阪田 仕事での目標は、昭和を広めていくことですね。昭和といえば阪田マリンって思ってもらえるような、そんな存在になりたいし、私を通じて昭和の素晴らしい文化や作品を知ってもらえたらいいなと思ってます。

あとは、昔の角川映画の雰囲気がすごく好きで、特に『彼のオートバイ、彼女の島』って映画があるんですけど、この映画も最高で……まだ若かりし頃の竹内力さんが出てるんですけど、めっちゃ二枚目の役をやられてて、今とのギャップも最高! ああいう映画があったらぜひ出たいですね。私が昭和に戻ることができないので……そこが歯がゆいんですけど(笑)。プライベートな目標は……マークⅡか初代ロードスターを購入したいです!

――さすがですね!

阪田 ヤンキー漫画もすごく好きで、高校の頃は『ホットロード』に憧れて、ガソリンスタンドでバイトしてました(笑)。


プロフィール
 
阪田 マリン(さかた・まりん)
●2000年12月22日生まれ。昭和カルチャーが大好きで“ネオ昭和”と自ら命名し、ファッションやカルチャーを発信する人気インフルエンサー。数々のメディアや企業からの出演オファーが殺到中!SNSでの総フォロワー数は約23万人。同じくZ世代で昭和歌謡に精通するシンガーの吉田カレンとタッグを組み、世に放つ懐かしくも新しいネオ昭和歌謡プロジェクト「ザ・ブラックキャンディーズ」を結成。昭和98年4月29日にシングル「雨のゴールデン街」でデビュー! X(旧Twitter):@marin_syowasuki、Instagram:@marin__neo80s