いろいろと勉強してきたことが今につながる

山口さんファンが急増するきっかけとなったのが「ダンゴムシ事件」であろう。2022年3月、大島璃音キャスターと山口さんが番組に出演した際、ダンゴムシの話題となった。

大島キャスターが山口さんに対し「ダンゴムシについても解説していただいた」と言うべきところを「ダンゴムシに解説していただいた」と言い間違い。山口さんが冷静に「私は、ダンゴムシではない(笑)」とツッコミを入れる……という切り抜き動画が、1000万回以上も再生されている。

「日本語が間違っているんじゃないかな、と思ってピンときました。彼女は素で間違えていましたが、私も素で返していました(笑)」

〇ダンゴムシに解説していただきました→私、ダンゴムシじゃないです[ウェザーニュースTV]

番組では、そんな愛らしいキャスターたちと出演することが多い山口さんだが、彼ら彼女らについて、どんな印象を持っているのだろうか。

「皆さん勉強熱心ですね。気象関係に多少興味はあったとしても、(キャスターに就任した)数か月後には、気象用語や気象情報そのものを理解していらっしゃる。記録的短時間大雨情報や土砂災害警戒情報など、気象庁から流れてくる情報ってたくさんあるんです。防災情報なので、細かいところを押さえておかないといけないし、間違いは絶対に許されない。しっかり勉強して視聴者の皆さんにお伝えしているので、すごいなと思います」

一度はそれかけたものの、さまざまな偶然やチャンスが重なって「好き」を仕事にした山口さん。過去のデータに基づいた“山口視点”の気象解説が生み出されたのは、やはり子どもの頃から「好き」に向かって歩んできた歴史があるからだ。

「私は、気象の解析云々よりも、今回来ている台風で予想される雨量がこれだけ。過去の事例では、これだけ降って、これだけの被害が出たので、今回も厳しい状況になりそうです、とデータに基づいての解説を得意としています。『理科年表』をはじめ、いろいろと勉強してきたことが今に生きて喋れているなって」

▲さまざまな偶然やチャンスを経て「好き」を仕事にできた

「好き」を仕事にできた=ゴールではなく、そこで、どう強みを生かして働くのかが重要。自分の歩んできた人生が武器となり、仕事に活かせることもある……ということか。

最後に「好き」を仕事にするのは難しいことなのか、問いかけてみた。

「運も必要な世界ですからね。比率で言うと難しいとは思うんですけど、やってできないことはないと思います。私も会社を辞めて『ウェザーニューズ』に入ったのが24歳。今思うと、無職になるのに、よくあんな無謀なことをしたなと思います(笑)。特に若い方だったら、いくらでもチャレンジできると思います」

(取材:浜瀬将樹)


プロフィール
 
山口 剛央(やまぐち・たけひさ)
気象予報士。大学卒業後、医薬品会社に勤めながら気象予報士試験を突破。1997年にウェザーニューズ社に転職する。365日24時間配信されている天気予報番組『ウェザーニュースLiVE』では気象解説員を努める。生真面目な風貌と、記録にこだわる一面が番組でもたびたび取り上げられたり、キャスターとのやりとりも人気。