こんなところまでK-PROが来てくれるんだ

――この仕事をしていて、一番うれしかったこと、悔しかったことを教えてください。

児島 ライブの価値が低いと思わせられる瞬間は、やはり悔しいと感じます。ライブの出演が決まってたのに、テレビのオーディションが入ったから断られてしまうとか。人気が出てきた芸人さんから「もうライブに出なくてすむわ」と言われたのが、一番悔しかったかもしれません。そのときは、なんのために何を作っているんだろうと思ってしまいました。

それでも、ウエストランドの井口くんが「こんなに忙しいけど、まだライブ出てるぞ」と言ってくれて。それ以降、後輩たちが人気に関係なく舞台に上がる空気を作ってくれたのが、一番うれしかったですね。

――FKDZと震災が、K-PROにとって大きな転機だったのではないかと思っています。こういった決断のとき、松本さんなどに相談をしているのでしょうか?

※永沢たかし(磁石)が当時、芸歴10年前後で「実力はあるのに吹きだまっている」と呼ばれる各事務所の芸人たちを集めて結成したユニット。K-PROがユニットの結成に大きな影響を与えた。

児島 はい、1人で決めることはほとんどないですね。松本さん(K-PROの代表を務める松本剛氏)やスタッフにも相談をするのですが、最終的に責任を取るのは私、自分は恥をかいてもいいやぐらいな感じで決断しています。

――FKDZの成り立ちを読んでいると、磁石の永沢さんの発想の豊かさ、先見の明にも驚かされます。

児島 そうですね。永沢さんは、運営側の脳みそを持たれている方だと思います。何年も先を見れるといいますか、びっくりするくらい情報を入手するのも早いんですよ。たぶん私の身近な人で、初めてIQOS吸ってた人です(笑)。

「ブームを待つだけじゃなくて、自分から動くことが大事」と言ってくれたのも永沢さんです。そして、自分だけじゃなくて集団で動くことが一番だとも。そんな永沢さんの勘の良さや、人柄を含めたお笑いへの熱い気持ちに、みんながついてきたと思います。

――これからのお笑いライブシーンをどのようにしていきたいと思っていますか?

児島 今までは、足を運んでくださることがどれだけ大変かを知りつつも、見に来てください! とお願いばかりしていました。ですので、これからは、こちらからどんどん会いに行くことを計画しています。行ったことのない都道府県、小・中学校や老人ホームなど、お笑い芸人さんが気軽に行ける仕組みを作りたいです。

選挙カーのウグイス嬢のアルバイトをしていたことがあったのですが、細かい路地に入ると「こんなところまで演説に来てくれた!」と喜ぶ声が聞こえてきて、それが印象に残っているんですよね。だから「こんなところまでK-PROが来てくれるんだ」って言われるような活動をしていきたいと思っています。

▲こちらから会いに行くライブをしたいと今後の展望を明かしてくれた

今までのお笑いを詰め込んだ20周年にしたい

――好きなことを仕事にした途端に、イヤな部分が見えて辞めてしまう人が多いと感じています。児島さんは、好きなことを仕事にすることに対して、どのように思っていますか?

児島 私も仕事がイヤになってしまうことはありました。芸人さんのことを、お笑いよりもアイドルのような扱いをしているお客さんが多かったときもあって。ネタ中に「カワイイ!」とかの声が飛ぶ雰囲気のライブになり、芸人さんから「なぜ注意をしないのか?」などと指摘を受けてしまったことがありました。

それから、他のライブでも、お客さんがまた変なところで笑ってる……と気になるようになったんです。笑ってほしいのは次のオチのときなのに。なんだか、お客さんの“笑い声ノイローゼ”になってしまったんですよ。

――お客さんは笑っているのに、喜べなくなってしまったんですね。

児島 そうなんです。好きなことを仕事にすると、お客さんのことを嫌いになるんだな、だったらこんなライブやりたくない! とすら思いました。でも、お客さんを教育するのも、スタッフの役割だと怒ってくれた芸人さんがいたんです。その言葉のおかげで、今も続けられているところが大きいですね。

それから、お客さんには強制せずとも、ライブシーンの楽しみ方について話すようにしました。そしたら徐々にですが、お客さんにも伝わってくれたみたいで、マイナスな気持ちを乗り越えられました。

仕事をするなかで、こんなに好きなのに「なんで?」と思うことがあるかもしれません。その「なんで?」の部分を、ちゃんと怒って注意してくれる周りの環境があったことが、好きな仕事を続けられる理由だったと思います。

――お笑いライブ制作ということに限らず、全ての仕事に共通する話ですね。

児島 あと、私がこの仕事を辞められないのは、いまだにお笑い好きって思われていることが一番の理由です。裏側では苦労をしていても、周りからは苦労を感じさせない。「児島さんはお笑いが好きだから」と思わせられているのであれば、“勝ち”だなって。実際、本当にお笑いが好きなんですが(笑)。

芸人さんもツラいところを見せずに、私の父親のような方々をテレビなどで笑わせていますよね。もし、私も芸人さんと同じようなことができているのであれば、すごくうれしいなって思います。

――最後にお聞きしたかったのは、児島さんは、K-PROのライブに爆笑問題さんに出ていただくという、ひとつの目標を達成されましたよね。今後の目標について聞かせてください。

※2023年5月18日、TOKYO DOME CITY HALLで開催されたK-PROの看板ネタライブ「行列の先頭」のスペシャルゲストに爆笑問題が出演。

児島 爆笑問題さんに出ていただけたのは、本当にうれしかったです。今後でいうと、来年がK-PROの20周年になるので、今までしてきたことを振り返られるようなことをしたいと思っています。そして、K-PROらしいと思われるような、あっと驚くこともしていくつもりです。でも、“K-PROらしくない”真逆なことをしてみたいとも日々考えているんです。

解散してお笑いから離れてしまった方に声をかけて、当時の話をしてもらうのも面白いかもしれませんね。また、今までメディアで忙しくてライブに出られなかった方にも、久々に舞台に出てほしいと相談してみようと思っています。


プロフィール
 
児島 気奈(こじま・きな)
1982年生まれ。東京都出身。株式会社K-PRO代表として、年間1000本以上のお笑いライブを企画、主催。さらに番組制作のキャスティングや所属芸人の育成、マネジメント業務なども行っている。2021年4月には劇場「西新宿ナルゲキ」をオープン、連日ライブを開催し、若手芸人が出られる舞台を運営している。X(旧Twitter):@kpro10th