アメリカが中国を見逃してきた2つの理由

就任してすぐ、トランプ氏は中国に対して厳しい態度をとりました。中国が北朝鮮問題に真面目に取り組んで解決してくれることを条件に100日間の猶予を与えもしました。

中国が北朝鮮に対しての影響力が足りなかったのか、やる気がなかったのか、トランプ大統領を甘く見ていたのか、それは定かではありませんが、その後も北朝鮮問題に進展は見られず、アメリカは明らかに中国に対して厳しい対策を取り始め、現在に至っています。

アメリカが中国を見逃してきた理由は二つあります。

一つ目の理由は、「中国は、豊かになれば民主化する」とアメリカが信じていたからです。しかし、民主化するどころか、天安門事件(1989年)が起き、共産党の統制が強くなり、習近平氏はとうとう「皇帝」になってしまいました。日本が大量のODA(政府開発援助)を中国に提供してきたのも同じ理由です。これらが間違った政策だったことは明らかです。

二つ目の理由は、「短期的に多少は損しても巨大な中国市場に乗り遅れたくない」という思惑です。今も、中国に進出している日本企業は、日本政府が中国に対して厳しい態度をとることを嫌がります。

1989年5月 天安門事件1か月前の天安門広場(撮影:高橋聖子)

トランプ氏はこの「Unfair」を正さなければならないと決断しました。事実上、孔子学院〔海外の教育機関と連携して、中国語や文化教育を目的とした中国政府の機関〕を禁止したり、ファーウェイ(華為技術)などに対する制裁措置をとったりしています。低い率の関税をもって中国の構造的な改革を求める交渉も始めました。

中国は真面目に交渉しているかのように思われましたが、いったんできていたはずの合意を中国は一方的に拒否しました。そこでアメリカは、とうとう25%もの関税をかけることになり、交渉は中断されました。その「米中貿易戦争」が現在も続いているわけです。

25%の関税をかける決定がなされる前、安倍首相はヨーロッパからの帰りにアメリカに立ち寄りました。トランプ氏に相談されたそうです。中国に25%の関税をかけると日本も短期的には打撃を受ける可能性があるけれども、耐えられるだろうかと。そして、安部首相は、トランプ氏の政策に賛成したそうです。

今も続く関税を中心とした米中貿易戦争

中国の脅威はアメリカで広く知られています。25%の関税に関しては、珍しく共和党も民主党も賛成しています。経済界も賛成しています。いちばん被害を受けているのは農業ですが、彼らも長年、中国との貿易では苦労してきました。

今は損をしてもトランプ氏の交渉が成功すれば長期的にはよくなると認めています。投資家は、懸念してはいるものの、おおむね賛成しています。こういった態度は、日本もまた同じでしょう。

令和元年(2019)6月の大阪G20において、アメリカ国民がいちばん懸念していたのは、トランプが妥協して「Bad Deal」に納得してしまうことでした。

ファーウェイに対する部品の販売規制を一部解除したことを批判している人はいますが、トランプ氏が譲歩せずに強い態度をとったことに対して国内的な批判はありません。追加関税を見送ったことに株式市場をはじめ、経済界はほっとしています。

結果的に交渉が再開されることになったので、基本的には素晴らしい結果だったと評価されています。

関税を中心とした米中貿易戦争がいつまで続くかはわかりませんが、このような措置がとられたことによって、中国は初めて真面目に取り組んでくると思います。

ア今も続く関税を中心とした米中貿易戦争 イメージ:PIXTA

アメリカ国民は、今までの大統領がこういった状況をほったらかしにしていたことをひどく腹立たしく思っています。今回は、トランプという政治家ではない大統領が事にあたっているからこそ、結果が出る可能性はより高いと思います。

もしヒラリー・クリントン氏が大統領であったなら、ほったらかし政策が続いただけでしょう。クリントン夫婦と中国の不正な関係は広く知られていることですが、ここでは述べないでおきます。